「ローカル5Gは地域BWAと全然違う。約10社が6月までの開始を要望」グレープ・ワン小竹社長

ローカル5Gのプラットフォーム事業を展開する新会社、グレープ・ワンが立ち上がった。ローカル5Gのコアネットワークを構築し、日本ケーブルテレビ連盟と連携しながら、CATV業界の無線ビジネス発展の“黒子”となる考えだ。社長に就任した住友商事の小竹氏に、新会社設立の狙いから今後の展開までを聞いた。

――ローカル5Gの免許申請が始まった昨年12月24日、ローカル5Gプラットフォーム事業を展開する「株式会社グレープ・ワン」の立ち上げを発表し、社長に就任されました。新会社設立の経緯と狙いを教えてください。

小竹 全国には今、日本ケーブルテレビ連盟に加盟しているCATV事業者だけでも400弱ありますが、元々はテレビの再送信を各地域に提供することから始まりました。その後、多チャンネルテレビ、インターネットや固定電話もバンドル提供するトリプルプレイ、さらに近年はMVNOとして携帯電話も提供しています。このように大手キャリアと同じようなビジネスモデルで事業を展開する中、CATVが生き残るためには、厳しい言い方をすると、無線にもっと取り組む必要があるということが背景にはありました。

時間は掛かると思いますが、5Gになって放送も無線IPで提供できるようになれば、CATVの強みは失われます。今、CATV事業は非常に安定しており、当面すぐに事業の先行きが厳しくなるわけではありません。しかし、無線が有線を凌ぐようなキャパシティを持つとなれば、CATVの優位性が一気に損なわれてしまうという危機感が大いにありました。

そこでケーブルテレビ連盟では数年前から無線戦略について様々な議論がなされてきましたが、そうした中、ローカル5Gの制度ができることになり、ケーブルテレビ連盟から住友商事に「ローカル5Gのコアネットワークの構築を一緒にやらないか」という話がありました。

住友商事は30年前からCATV業界の発展に一緒に取り組んできました。また、住友商事自身が各産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくうえでも、ローカル5Gは必要だろうと考えました。この2つの理由から、「要請にお応えしたい」とグレープ・ワンを立ち上げたのです。

――CATV業界の無線戦略を推進する会社としては、すでにMVNO事業プラットフォームの運営などを行う地域ワイヤレスジャパンがあり、同社も小竹氏が社長を務めています。地域ワイヤレスジャパンを母体にする考えはなかったのですか。

小竹 その議論はありましたが、コアネットワークを持つためには増資が必要でした。せっかく良い形で51のCATV事業者に地域ワイヤレスジャパンへ出資いただいているのに、現状の枠組みに変化があるのは望ましくないと考えました。

――そこで住友商事、インターネットイニシアティブ(IIJ)、地域ワイヤレスジャパン、そしてZTV、愛媛CATV、秋田ケーブルテレビ、ケーブルテレビ、多摩ケーブルネットワークのCATV5社の出資により、新たにグレープ・ワンを立ち上げたと。各社の役割を教えてください。

小竹 IIJはフルMVNOとしてコアネットワークの運用経験を持っており、技術面での支援を頂けます。CATV5社は、先駆けてローカル5Gにチャレンジされる方ですね。無線戦略の立案については、引き続きケーブルテレビ連盟と連携しながら、地域ワイヤレスジャパンが担っていきます。グレープ・ワンはその黒子としてコアネットワークの構築と運用を引き受けるという位置づけです。

コアネットワークを持つには2桁億円が必要ですが、住友商事はそのリスクを負担しながら、全体を取りまとめる立場になります。各社の出資比率は非公開ですが、グレープ・ワンは住友商事の連結子会社。つまり出資比率は50%超です。

月刊テレコミュニケーション2020年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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小竹完治(こたけ・かんじ)氏

1989年4月、住友商事入社。2012年4月ジュピターテレコム 理事 営業本部長、2014年4月ジュピターテレコム 法人営業本部長。2017年4月、住友商事 ケーブルテレビ事業部長(現任)、地域ワイヤレスジャパン 代表取締役社長(現任)。2019年8月、グレープ・ワン 代表取締役社長(現任)

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