IDC Japanは2020年3月13日、国内法人向け5G関連IT市場予測を発表した。
ユーザー企業や通信事業者、ベンダーなどに対する調査結果から、同市場の2026年の市場規模は1436億円、2020年~2026年の年間平均成長率は198%と予測している。
国内法人向け5G関連IT市場予測:2020年~2026年
また今回の調査では、企業への5Gの普及が、無線LANや固定ブロードバンドなど既存ネットワークの置き換えではなく、新規のDX用途やスポット導入から始まることが明らかになったという。新しいDXのユースケースとしては、スタジアムなどのイベント会場、観光、ゲームなどでの没入感の高い新しい映像体験の提供が挙げられる。
産業分野においては、無線化による生産設備などのフレキシビリティ向上、画像などによる設備の監視や予兆保全、自律移動機器(自動搬送車、ロボット、ドローンなど)の活用、検査/点検、遠隔からの作業支援、3Dシミュレーションなど現場向けのソリューションに期待が集まっている。背景には、人手不足や作業員の安全確保、働き甲斐の維持、防犯、生産性/品質向上など多くの現場に共通する課題があると同社は見ている。
5Gの普及拡大には、5Gサービス提供エリアの早期拡大、5G SA(スタンドアロン)構成の提供、コストの低廉化、デバイスやアプリケーションなどエコシステムの発展、自律運転や遠隔操作の安全性に関する法制度の整備など、ユーザー企業にとっての5G利用環境が整う必要があり、やや時間を要すると予測している。
5Gに積極投資する産業分野としては、戦術の人手不足などの課題に対して革新的なソリューションの実現に取り組む製造、運輸、建設、医療、メディアなどさまざまな分野が挙げられる。
中でも、産業機器メーカーなど製造業自身による5Gを活用した現場のDXやR&D活動と、それによって得た知見を自社製品と組み合わせて新たなソリューションとして販売する取り組みは、その顧客である多くの企業に波及するとIDCは見ている。
IDC Japan コミュニケーションズグループ リサーチマネージャーの小野陽子氏は、「5Gはまずは、DXによって企業課題を解決するために導入される。そしてそれらの取り組みは、より広範な社会課題を解決するする動きへと広がっていくだろう」と述べている。