クラウドサービスの普及により、インターネットを基盤として多くのビジネスが展開されるようになった。オンラインバンキングやEC、コンテンツ配信のような顧客向けのサービス提供はもちろん、企業内で用いられる業務アプリケーションについても、オンプレミス型からSaaSへの移行が進んでいる。
ここで問題となるのが、企業が管理すべきネットワークの範囲が格段に広がり、運用が複雑化することだ。米サウザンドアイズ ソリューション・エンジニアリング担当バイスプレジデントのジョン・クラーク氏は、「トラブルを検知し、障害を切り分け、それに基づいて復旧、原因の解決を図る。この流れが非常に複雑になっている」と指摘する。
(左から)米サウザンドアイズ ソリューション・エンジニアリング担当バイスプレジデントの
ジョン・クラーク氏、プロダクト・マーケティング担当ディレクター アンジェリーク・メディナ氏、
日本法人 サウザンドアイズ・ジャパン 代表の尾方一成氏
同氏によれば、インターネット/クラウドの世界では年間1万4000件以上のルーティング関連のエラーが発生している。脆弱性をついた攻撃も増加傾向にあり、年間のDDoS攻撃回数は1700万にも及ぶ。また、企業が外部プロバイダーを利用してハイブリッド型のITシステムを運用しているケースでは、外部プロバイダーに起因する障害が全体の31%を占めるという。
こうした障害は当然、企業側からは制御できないどころか、検知・可視化することさえ容易ではない。現在の企業ITは「見えない・制御できない」世界に大きく依存するようになったわけだ。
現在の企業ITは、ユーザーからは”見えない世界”に大きく依存している
サウザンドアイズは、このインターネット/クラウドの状態を可視化するサービスを提供している。たとえば、マイクロソフトはMicrosoft Azureに関して、サウザンドアイズから取得したデータを基に、リージョン間のネットワーク遅延を測定・監視し、その情報をユーザーに提供している。このほか、オラクルやセールスフォース・ドットコムといったクラウド事業者、大手金融、石油・ガス事業者など様々な業種で同社のネットワーク可視化・監視サービスが使われている。
世界中のインターネット障害情報を監視
そのサウザンドアイズが、インターネット/クラウドの可視性を格段に高める新サービス「Internet Insights(インターネット・インサイト)」を発表した。日本国内では、12月20日から提供を開始した。
同社は世界中にエージェントを配置してクラウドアプリケーションやネットワークのパフォーマンスを監視するほか、同社のサービスを利用するユーザーが自社のデータセンターやサーバー、ルーター、PC等に配置するエージェントを通して、クラウドサービス/インターネットのパフォーマンスを測定。1日あたり数十億のサービスパスを追跡している。
アプリケーションの体感品質、ネットワークの通信品質、経路、障害発生箇所などを可視化。
マルチレイヤの監視を可能にする
新サービスのInternet Insightsは、これらのテレメトリデータを利用して、世界中で起きているインターネットの障害情報を企業の枠を超えてマクロの視点で提供するものだ。ユーザーは、インターネット障害等が発生した際にその発生箇所や影響範囲を迅速に特定し、ISPやクラウド事業者等と共有することで、問題解決と復旧のスピードを早めることができる。
また、ユーザーはクラウドサービス事業者やISP、CDN事業者といった事業者ごとの健全性を把握することもできる。導入するサービスを選ぶ際の判断基準としても活用できるのだ。