IoTは、導入してそれで終わりではない。むしろ導入してから、様々な試行錯誤が始まる。
例えば、IoTの「肝」であるデータに関してもそうだ。自社が抱える課題を解決したり、新たな価値を創造することを目的にIoTデータを収集。分析にかけたものの、「期待したような結果は得られなかった」というケースは当然起こり得る。
しかし、すぐあきらめてしまうのは禁物だ。問題は、データの取得方法だけではないかもしれない。今は「ただのゴミ」にしか見えないデータも、別のデータと組み合わせて分析にかけることで、「宝の山」に変わることがある。
最近は、データ取引市場や各種データの提供サービスが発展しており、自社データに限らず、他社データと連携した付加価値創出が可能になっている。
第3のマネタイズ方法も例えば、携帯電話事業者もデータ提供サービスに力を入れている。
KDDIが2017年から提供する「KDDI IoTクラウド Data Market」は、KDDIの提携パートナーが保有するデータ群と自社のIoTデータを組み合わせて分析できるサービスだ。
データ群のラインナップは順次追加されており、現在27種類。国勢調査をもとにした公的データのほか、将来人口推計、訪日外国人の動向解析データ、ストレスや心拍数等の生体情報、プローブデータなど多岐にわたる(図表)。
自社のデータ単体では、それほどの価値を生み出せそうになくても、こうした別のデータを組み合わせることによって、データの価値を大きく高められる可能性がある。
図表 「KDDI IoTクラウド Data Market」の概要[画像をクリックで拡大]
小売店を例に取ると、保有するPOSデータに、KDDI IoTクラウド Data Marketから取得した「年収階級別世帯数推計データ」「貯蓄階級別世帯数推計データ」「推計年収別世帯数」「Chomonicx(ライフスタイルクラスタデータ)」などを掛け合わせることで、想定する世帯年収や貯蓄、ライフスタイルに合わせた新規出店を行うことができる。
また、トラックやバスなど事業用貨物自動車に搭載が義務付けられているデジタルタコグラフ(デジタコ)は、速度や時間、距離などの基本的な情報のほか、GPSによる位置情報やエンジン回転数の変化、急加速・急減速など様々な情報を記録することができる。デジタコを活用している事業者はより細かいデータ解析を行えるので、事故を防止したり、ドライバーへの安全指導に活かすことが可能だ。このほか、制限速度をオーバーしやすい場所もデータから抽出できる。そこに、KDDIのデータ群の中から、小学校の箇所や人通りの多いエリアなどの地理情報を組み合わせれば、自治体は交通事故の潜在的危険箇所を把握し、道路工事を行うべき場所を絞り込むといったこともできる。こうしたデータは、建設コンサルタントを通じて自治体に提供され、デジタコ事業者にも売上の一部が支払われる。
自社のIoTデータをマネタイズする方法としては、主に自社のコストダウンと自社製品・サービスの改良による売上向上の2通りが挙げられるが、「第3の方法として、データの外販もある」とKDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏は話す。
KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏