ソフトバンク湧川氏「成層圏基地局の活用でどこでも使える5Gが可能に」ソフトバンク 先端技術開発本部 本部長の湧川隆次氏は、5Gが4G/3Gと異なる点として、「サービスを提供するためのネットワーク」であることを挙げた。「5G時代には回線を売るのではなく、サービスを買っていただき、その裏に5Gがあるという世界が来ると考えている」と湧川氏は述べた。
ソフトバンク 技術戦略統括 先端技術開発本部 本部長 湧川隆次氏
ソフトバンクは、2018年から5Gの実証実験に取り組んでおり、現在は2019年のプレサービスに向けて準備を進めているという。商用サービスの開始は2020年3月の予定だ。「最初は都市部などに5Gの基地局を打っていく。5G端末が普及しないとインフラだけ整備しても意味がないので、端末の浸透率とサービスの登場を見据えて高度化を進めていく」とのこと。
ソフトバンクの5G展開計画
湧川氏は、ソフトバンクの5Gの取り組みを、同社が力を注いでいる超低遅延通信のトライアルを中心に説明した。
その1つが、日野自動車と行っている隊列走行の取り組みだ。将来的には新東名高速道路などを使って、運転手が先頭の車両だけに乗務して、無人の車両が追随して走行する隊列走行を実現することを目指している。
隊列走行の実現に向けトライアルが行われている5Gによる車車間通信
これを実現するには、映像や操縦指示などを車両間で直接やりとりする車車間通信が必要となるが、ソフトバンクでは車両間通信で遅延時間片側1m秒を実現しているという。
実用化には、ビームフォーミングで絞り込んだ電波の方向がカーブなどで外れてしまう問題への対応が必要となるが、ソフトバンクでは、方向によって電波の強さが変化しにくいヌルフィル化アンテナを開発することで、この問題をクリアしたという。
5G基地局のエリア外で、車車間通信を実現するのは技術的にハードルが高いが、すでにこの問題もクリアしているとのこと。
HAPSMobileのコンセプト
湧川氏は、講演の後半で「MONET」と「HAPSMobile」を紹介した。「これらは5Gと密接な関係がある」という。
MONETは、ソフトバンクがトヨタと展開するMaaS(Mobility as a Service)で、自動運転車のe-Paletteにより、多様なサービスの展開が計画されている。これには前述の車車間通信などの技術がフルに活用されることになる。
HAPSMobileは成層圏に無人機を飛ばし、これを基地局とした移動通信サービスの提供を目指している。1機のカバーエリアは半径200km、日本全土を40局でカバーできるという。
湧川氏は、日本では面積で40%程度、携帯電話が使えないエリアが残っており、HAPSMobileと組み合わせることで、どこでも使える5Gが実現できるとした。
ただし、緯度の関係で日本では太陽電池で十分な電力が得られないため、ソフトバンクでは、HAPSMobileを当面海外で事業化する計画。国内での展開はやや先になりそうだ。