<特集>ローカル5G徹底ガイドローカル5Gがやってくる!――5G/LTEを自営できる新制度

「ローカル5G」の国内導入が決まった。5Gを自営無線として利用できる、この無線システムは、どのような特徴を持つのか。併せて“解禁”されるプライベートLTE「自営BWA」とともに徹底解説する。

企業のデジタル変革の有力なツールとなり得る2つの新しい無線通信システムが、年内にも利用可能になる。

1つめが、一般の企業も限られたエリアで周波数の割当を受け、5Gを自営無線として利用できる「ローカル5G」である。

情報通信審議会(情通審)で5Gの技術的条件を検討している新世代モバイル通信システム委員会は、4月12日に取りまとめた報告書の中で、このローカル5Gについて提言した。

総務省は、4月10日に携帯電話事業者4社への割当が決まった3.7/4.5GHz帯と28GHz帯の5G用帯域のうち、4.5GHz帯の200MHz幅(4.6-4.8GHz)と28GHz帯の900MHz幅(28.2-29.1GHz)をローカル5Gで使えるようにすることを計画している。今回利用が可能になるのは、これらの帯域の中で、衛星通信業務などとの共用検討が終わっている28.2-28.3GHzの100MHz幅だ(図表1)。具体的な帯域利用のルールが決まるのはこれからだが、100MHz幅を丸ごと5Gで利用できるようになれば、最大通信速度3Gbpsという超高速の自営無線が実現する。

報告書の取りまとめを受け、総務省は省令改正などの手続きを進める。9~10月頃には制度整備を終え、各地の総合通信局で免許申請を受け付けられるようにする考えだという。今回は個別審査になるため免許が下りるのに2~3カ月程度かかる見込みだが、年内にもPoC(概念実証)などの形でローカル5Gの運用を開始する企業が出てきそうだ。

図表1 ローカル5Gへの割当が検討されている周波数帯[画像をクリックで拡大]
図表1 ローカル5Gへの割当が検討されている周波数帯

自営BWAでNSA対応年内に利用できるようになると見られているもう1つの無線通信システムが、「自営BWA」だ。地元に密着した無線通信サービスを提供している地域BWA用の周波数帯2575-2595MHz(20MHz幅)を、地域BWAが利用していない、あるいは近い将来利用する可能性が低い場所に限り、企業などが自営無線で利用できるようにする。通信方式には、BWAで使われているLTEが用いられる。

海外では、Wi-Fiと比べて伝送特性に優れ、遅延が少ないLTEを自営網として利用する「プライベートLTE」が、鉱山や空港、港湾、プラントなどで活用されている。「最近は工場のネットワーク化に使いたいといった案件も出てきている」(エリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏)という。

日本にはこれまでLTEを自営無線で利用できる制度がなかったが、自営BWAが制度化されることで、企業などがプライベートLTEの展開に動き出す可能性が出てきた。

今回の報告書でローカル5Gとともに自営BWAの導入が提言された理由の1つに、5Gが当初、LTEエリアの中に5Gのエリアを設けて一体運用し、通信制御はLTE網側で行うNSA(ノンスタンドアローン)と呼ばれる方式で実用化されることがある。自営BWAを用いてローカル5Gを一体運用すれば、来年以降と見られている5Gを単独で運用するSA(スタンドアローン)方式の端末・機器の供給を待たずに、ローカル5Gの導入が可能になる。

月刊テレコミュニケーション2019年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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