既存設備を極力変えないでは、SRF無線プラットフォームは今後どのように実用化されていくのだろうか。
FFPAはSRF無線プラットフォームの技術仕様の策定と標準化を行い、それに基づいて無線機器ベンダーが製造した製品を認証する。
「既存製品を極力使って、コストが高くならないようにする」(丸橋氏)ことで普及を目指すという。「例えば、無線LANコントローラーにSRFのソフトウェアをダウンロードすると、APもSRFに対応する」(佐藤氏)。
ただ、すべての無線機器がSRF無線プラットフォームに対応するわけではない。FFPAに参加しているNECや富士通といった国内ベンダーは対応機器を出していく可能性が高いが、海外ベンダーの動向は不明だ。
そのため、同じ工場内でSRF無線プラットフォームに対応している無線機器と、非対応の無線機器が混在することも当然考えられる。そこで、SRFセンサーが非対応側の電波状況をモニタリングして、Field Managerにそのデータを伝達することで、互いの干渉を防ぐ仕組みも用意する。
SRF無線の性能SRFを導入すると、どれくらい無線が効率化されるのか。FFPAでは図表4の通り性能指標の目標を掲げている。
図表4 SRF無線プラットフォームが目標とする性能指標
まず、システムの信頼性を高めるため最高100ミリ秒という低遅延を目指し、パケットロスもなくす。センサー設置密度も3倍まで高め、システムのキャパシティを拡大させる。
システムの安定性と保守性も高める。Field Managerから、帯域の使用率などのデータを生産管理ソフトなどに連携して無線通信を可視化し、IT管理者が不在の製造現場でも、無線環境を管理できるようになるイメージだという。
今後、FFPAは2019年中旬にSRF無線プラットフォームの標準化を完了し、年内には認証プログラムも開始する予定だ。
複数の無線規格を協調制御するという視点は、今までありそうでなかった。FFPAが新しく挑戦する理由は「無線が混在してから対策を打つのは非常に困難。工場向け無線の市場が立ち上がり始めた今が最適」(丸橋氏)だからだ。
また、丸橋氏は「ITシステムは3~5年も経つと古いと思われるが、工場のシステムは20~30年のスパンで稼働することも多い。我々も同じ目線で動かなければならない」と話す。工場における無線自体が黎明期ということもあり、SRF無線プラットフォームが製造現場に普及するのはまだ先のことだろう。
しかし、30年後には無線がIoTのボトルネックになる工場はなくなり、ヒトやモノがスムーズに流れるスマートな工場が日本に普及しているかもしれない。