次々と新たなLPWA技術が登場するなか、先駆者としてマーケットを切り開いてきたのがSigfoxだ。日本でその全国サービスを展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長を務める松木憲一氏は現状について次のように語る。
「技術の比較競争をやっていても仕方がない。ビジネスで成功すれば、スペックの差を埋めてしまうのが今の状況。我々は“先行感”を出していく」
他規格に対するSigfoxの最大のアドバンテージは、LoRaWANやセルラー系LPWAがいまだ実証段階あるいはサービス開始前であった「半年前にすでに商用段階に入った」(松木氏)ことだ。2017年2月にスタートしたSigfoxサービスは、約1年後の2018年春時点で国内主要都市にエリアを拡大し、人口カバー率65%を超えた。
現在は「間もなく人口カバー率85%を達成する」状況にあり、当初目標としていた「2020年3月に人口カバー率99%」に向けて、着実にエリア整備を進めている。
主要都市をすでにカバーしているため、次々と、Sigfoxを利用したIoTサービスの実証/トライアル、さらには商用IoTサービスの展開が始まっている。松木氏によれば現在、「100万回線を超えるオーダーが進行中」だ。
パートナー技術支援に注力改めて、KCCSが展開するSigfoxサービスについて整理しておこう。
KCCSは“1国1事業者”のオペレーターとして国内のSigfoxネットワークの構築と回線提供を行い、デバイスやアプリケーション開発、インテグレーションについてはパートナーが担う。なお、当初は通信速度100bpsの上り通信のみでサービスを始め、2017年11月に下り通信サービスを開始した。
パートナー数は2018年10月現在で379社に上り、マーケティングや技術支援、パートナー間のビジネスマッチングと多岐にわたる活動を行っている。
KCCSが特に今注力しているのが技術支援だ。IoTビジネスは、1つひとつの案件ごとに個別のソリューション開発が生じるSIビジネスであるため、「技術提供とプロジェクト管理の支援が大事」と松木氏。案件に応じてエリアを整備することに加えて、「電波がきちんと飛ぶよう、デバイスの設置の仕方などからサポートする」など、SI支援に力を入れる。
また、そこで得られたノウハウは広くパートナー間で共有する。この12月に、新たなパートナー支援用のWebサイトを開設する計画だ。事例紹介動画などのコンテンツを充実させるという。
こうした取り組みによって、IoTデバイスやアプリケーションが充実し、さらにソリューション構築ノウハウが積み重ねられている点もKCCSの大きな強みだ。2018年4月にはソフトバンクが、Sigfoxと特徴が似ているNB-IoTを使った商用サービスを開始したが「現在のところNB-IoTは競合にはなっていない」と松木氏は話す。エリアとデバイス、アプリケーション、SI力をあわせた総合力に自信を見せる。