顧客数をなかなか伸ばすことができなかったNTT東日本のSOC運用サービス。その要因の1つは、SOC運用チームが自信をもって力強く前に進むことができないことにあった。しかし、1人の男の“熱量”がメンバーの自信に火を点ける。NTTグループの上級セキュリティ人材を紹介する連載「<サイバーセキュリティ戦記>NTTグループのプロフェッショナルたち」の第17回は、NTT-MEの小林淳史を紹介する。
その数、約30万人――。NTT東日本グループのネットワーク総合エンジニアリング企業、NTT-MEのセキュリティオペレーションセンター(SOC)が見守っているユーザーの総数だ。
数万人の従業員がいるNTT東日本グループ全体のSOC運営を元々担ってきたNTT-ME。さらにここまで拡大したのは、長年培ってきたノウハウを活かし、グループ外の企業・自治体に向けても2020年3月からSOC運用サービスを提供し始めたからだ。NTT東日本の保守運用業務トータルサポートサービス「ダイヤモンドサポート」の「セキュリティアラート監視対応サービス」として提供されている。
ただ、実は最初から順調にユーザー数が伸びたわけではない。
「すぐに何とかしてくれ」。こんなミッションを手に、小林淳史はサービス開始から約半年が経過した2020年10月、NTT-MEを含むNTT東日本のSOC運用サービスチームにジョインする。
「いや、できるよ」 誰かがストレッチして前に進まなければならない
NTTコムウェアやNTT研究所を経て、2010年にNTT東日本の情報システム部門に異動した小林。以降約10年にわたりNTT東日本の社内システムの企画・運営を担当してきた。
その小林がNTT東日本のSOC運用サービスのチームに加わったとき、チームに漂っていたのは、こんな雰囲気だったという。「失敗してお客さまに迷惑を掛けたら、どうしよう」
サービス提供側のためらいが、ビジネスにブレーキをかけていたのである。
外から見れば、不思議な話だろう。長年、NTT東日本グループのSOCを運営してきたチームなのだ。「当然、SOC運用サービスくらいできるだろう」と大抵の人は思うはずだ。しかし当事者からすると、違ったらしい。
「他社向けにSOC運用サービスを提供するのは初めてのこと。やったことがないのですから、本当にできるのかどうかは誰にも分かりません。ですから、誰かが『いや、できるよ』とストレッチ(背伸び)して前に進む必要があります」
その役を買って出たのが小林だった。