<特集>海のIoT海でも始まったIoT革命――スマート漁業から水中ロボットまで

これまで“ICT未踏の地”であった海を、IoTが変えようとしている。環境センサーにIoT船、さらには水中ロボットと、海をネットワーク化/デジタル化するデバイスが進出し始めている。

あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの波は、陸上から海へ広がろうとしている。これまで海と縁が薄かったICT事業者にとっては、新マーケットを開拓するチャンスだ。海洋関連ビジネスで主役級の役割を担える可能性もある。

「当社の持つ水中音響・通信、センシング技術を使って海上・海中の物体を検知するソリューションの試作機をこの1年で取り揃えた。昨年から海運・造船、海洋自衛、警備・防犯等でお客さまとトライアルを始めている」

そう語るのは、重点事業分野の1つに「海洋」を掲げるOKIで情報通信事業本部 IoTアプリケーション推進部 部門長を務める藤原雄彦氏だ。

音波を使って水中の対象物を検出・分析する同社の水中音響センシング技術は、これまで85年にわたり防衛分野で活用されてきた。ただし、この技術を民生向けに展開するには市場が小さかったこともあり、OKI内でも長年“知る人ぞ知るビジネス”だったという。

だがここに来て、技術の一部を民間向けにも活用していこうとする政府の方針もあり、民需向けのソリューション開発に注力している。IoTアプリケーション推進部 SEチームの石原寛氏は、「子会社に分散している関連技術をもう一度集めて、IoTで再構築しようとしている」と話す。

(左から)OKI 情報通信事業本部 IoTアプリケーション推進部 部門長 藤原雄彦氏、同部 SEチーム 石原寛氏
(左から)OKI 情報通信事業本部 IoTアプリケーション推進部 部門長 藤原雄彦氏、
同部 SEチーム 石原寛氏

水中音響技術で沿岸監視昨年12月には、沿岸重要施設に侵入しようとする不審者等を検出する「水中音響沿岸監視システム」(図表)を開発し、その評価キットを発売。海中に設置したセンサー(監視ブイ)が放射音を検知し、その音響データを分析することで目標位置を特定する。「特徴的な音だけを拾えるフィルタリング技術など、防衛分野で培った技術が強み」(藤原氏)だ。

図表 OKI水中音響沿岸監視システム評価キット
図表 OKI水中音響沿岸監視システム評価キット

この水中音響技術は、センシングだけでなく海中におけるデータ通信でも大きな役割を果たす。同社は海底探査機等向けに水中音響通信装置も提供している。

さらに、陸上と海上、船舶の通信には、920MHz帯を使ったマルチホップ無線通信「SmartHop」を組み合わせたソリューションも開発。SmartHopは見通しのよい場所なら1kmの長距離通信が行えるのが利点であり、「海上警備に使うブイをたくさん浮かべる場合に、920MHz帯無線でデータを集めようという構想もある」と石原氏は話す。また、沿岸施設の建設業者では、複数の作業船を920MHz帯無線でつなぎ、船間の情報交換に用いようという検討も始まっている。

月刊テレコミュニケーション2018年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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