SaaS型運用監視ツール「Datadog」を導入する企業が増えている。同社によれば、2017年末に約6000社だった顧客数は、2018年6月時点で約8000社まで拡大。AT&T、Twitter、サムスンなど著名企業も少なくない。日本でもすでに1000社以上が利用している。
「AWSの有力パートナーであるcloudpack(アイレット)は数多くのAWS事例を持っているが、彼らの運用保守サービスはすべてDatadogを使って提供されている。また、cloudpackのお客さまを除いても、すでに数百社の日本企業に使われている」と同社の服部政洋氏は説明する。DatadogのWebサイトの導入実績のページには、サイバーエージェント、サイボウズ、ニコンなどの日本企業のロゴが並ぶ。
Datadogの大きな特徴の1つは、従来、別々のツールだったインフラ監視、APM(アプリケーション性能監視)、ログ管理の機能を統合的に備え、単一のダッシュボード画面で管理できることだ。「セキュリティ以外のほぼすべてのシステム情報をモニターできる」と服部氏は話す。
デジタル変革が進展するなか、DevOpsなど、開発運用体制の変革も進んでいる。そこで伸びているのが、従来の縦割りではなく、サーバーからストレージ、アプリケーションまでシステム全体を統合的・横断的に可視化できるDatadogというわけだ。
キオスクやPOS端末の監視も「クラウドも既存のオンプレミス環境も、分け隔てなくモニタリングできる」のも特徴だ。「オンプレミスについてはエージェントをインストールすることでデータを収集するが、AWSやAzureなどのクラウドに関してはAPI連携でほぼすべてのデータを持ってこられる」。
マルチクラウド時代の今、複数の環境にまたがって1つのサービスは実現される。にもかかわらず、環境毎に異なるツールで監視を行うのは非効率だ。Datadogは、前出のAWSやAzureのほか、GCP、VMware、OpenStackなど、250以上の環境やツールとのAPI連携が可能になっており、Datadogのダッシュボード画面上で統合的にモニタリングできる。
図表 Datadogのサービス概要
Datadogが興味深いのは、さらにIoTまで統合的にモニタリング可能にしようと取り組んでいることだ。すでに事例もある。米国のある企業は、街中のデジタルサイネージ用のキオスク端末にDatadogのエージェントをインストールし、様々なデータを収集・可視化している。単にデバイスの情報を取るだけではなく、「気象や広告のデータなど、ビジネス側のデータも取得して分析を行っている」という。また、POS端末にDatadogのエージェントを入れ、販売データの分析に活用している大手小売企業もある。
服部氏によれば、DatadogのCEOやCTOは「monitor everything」という言葉をよく使うそうだ。ツールの壁、環境の壁、システムとビジネスの壁など、様々な壁を壊しながら、IoT時代にますますデジタル化していくビジネス全体を可視化していこうというのが、Datadogのビジョンのようだ。