【NGNの新展開】帯域確保型データ通信「データコネクト」の活用法を徹底検証(後編)

NTT東西のNGNが新しい展開を見せている。6月1日から提供が始まった帯域確保型データ通信「データコネクト」は企業ユーザーにとって、どのような利用価値があるのかを徹底検証した。

データコネクトをどう使うか

前編ではデータコネクトの概要と仕組みを解説したが、後編ではその利用用途を考えてみよう。図表5に示したように、最初に考えられるのはテレビ会議の際の資料共有である。

図表5 データコネクトの利用用途 (クリックで拡大)
図表5 データコネクトの利用用途

これまでのNGN上のテレビ会議システムは、データ通信を用いた資料共有は実現できず、音声と映像のみのシステムであった。データコネクトを利用すれば、NGNの特徴であるハイビジョンクラスの映像と共に会議資料の共有も可能となる。さらに、テレビ電話とデータコネクトの併用となるので、従来のテレビ電話の料金のままで資料共有することも可能になる。

次にデータコネクトのみを利用するケースはどうだろうか。以下に3つの観点から評価してみる。

(1)「帯域確保型」通信であること
データコネクトは従来のインターネットVPNなどのベストエフォート通信ではなく、帯域確保型の通信である。優先度の点ではテレビ電話などの「最優先」、VoDなど映像配信の「高優先」に続く「優先」クラスではあるが、ベストエフォート通信と比べれば低遅延・高品質な通信が期待できる。

ただし、この点ではデータコネクトで利用できる帯域が通常1Mbpsまで、複数のメディアストリームを束ねても最大5Mbpsであることが少し残念である。現在のインターネットでも、適切に設計すれば数Mbps程度の実力を持つインターネットVPNなどは実現できそうである。とはいえ、その場合は帯域が保証されるわけではない。それに対して、データコネクトの「帯域確保型」をどう評価するか判断の分かれるところである。

(2)従量制課金であること
データコネクトは従量制の料金体系であり、帯域を確保している間だけ課金される。従って、企業の拠点間通信などのように通信が常時発生する使い方ではなく、1日に数回といった通信頻度の少ないケースで効果を発揮する。

図表5に示したように、例えば1日1時間だけ通信を行う場合、毎日使っても1Mbpsであれば1カ月で7200円、5Mbpsでも1カ月で6万円となる。実際にはこれに加えてフレッツ 光ネクストの基本料金(ファミリータイプの場合、約5000円/月)とひかり電話の月額基本料(基本プランの場合、500円/月)が必要になるが、それでも専用線や広域イーサネットなどと比べれば、はるかに安い料金となる。

(3)通信先を電話番号で選択できること
従来のデータ通信であれば、専用線にしても広域イーサネット、IP-VPNにしても、事前に通信事業者などと契約して通信相手を特定する必要がある。インターネットVPNの場合、通信事業者との契約は不要であるが、ユーザー側で準備するVPNルーターなどの装置に通信相手を設定することは必要である。どちらにしても通信相手は固定され、柔軟に変更するような運用は難しい。

それに対してデータコネクトでは、単に通信相手を電話番号で指定してSIPセッションを張るだけで通信できる。SIPセッションを張る際には、お互いの電話番号を交換する形となるので、あらかじめ登録しておいた相手とだけ通信することができる。つまり、必要な時に必要な相手とだけ通信するオンデマンドによるVPNを簡単に構築することができることになる。特に、通信先が1つに固定しておらず、複数の相手と通信する必要がある際には、その都度通信相手との間にオンデマンドでVPNを構築して通信できる。

月刊テレコミュニケーション2010年8月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

今井恵一(いまい・けいいち)

NECに入社以来、交換システムの開発、IPv6などインターネット関連の技術マーケティング、企業向けオフィスソリューションの企画などを手がける。 2006年よりテレコムサービス協会での活動を始め、現在は政策委員会委員長として、NGNの利活用や接続ルールなどを中心に積極的な政策提言を行っている。

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