KDDIは2018年3月7日、医療介護向けソーシャルメディアプラットフォーム「メディカルケアステーション(MCS)」を提供する日本エンブレースと資本業務提携を発表した。出資金額や出資比率は非開示。KDDIは今回の提携を機に、医療介護向けのITプラットフォーム事業に参入する。
日本エンブレースのメディカルケアステーション(MCS)は、主として在宅医療・介護の現場で現在使われている、完全非公開型のSNSだ。
在宅医療・介護のサービスは、医師やケアマネジャー、看護師、薬剤師など、多職種の連携により提供されているが、大きな課題の1つが多職種間での情報共有だ。質の高い在宅医療・介護サービスを提供するには、患者に関する情報のスムーズな共有が重要だが、それぞれが異なる組織・場所に勤務しているため簡単ではないからだ。
そこで解決策として導入が広がっているのが、医療介護向けに開発されたMCSである。今年1月時点で207地区の医師会に採用されており、すでに約6万人の医療・介護従事者に利用されているそうだ。患者やその家族とのコミュニケーションにも活用されている。
MCSの主な特徴
KDDI バリュー事業本部 担当部長の岩崎昭夫氏は、「医療介護の現場ではIT化が急速に進んでいる」としたうえで、MCSは医療介護のIT化において「血管や血液の役割を担う」と説明。今後、日本エンブレースと共同で、MCSを中核にした医療・介護向けITサービスの企画・開発に取り組むとした。
具体的な取り組みの1つとして、今のところ主に在宅医療・介護で利用されているMCSを、「別のシーンでも活用いただけるよう、新たなサービスを企画・開発していく」(岩崎氏)。
そのアイデアの1つとして紹介されたのが、重症化予防だ。MCSで医師や管理栄養士、保健師等が情報共有しながら、重症化予防をサポートする食事・バイタルデータ管理ツールの提供を構想しているという。
「従来、重症化予防は、国保や健保が主導していたが、民間の生命保険会社がMCSを利用して、国民の重症化予防をサポートすることも可能だと考えている。生命保険会社は健康維持のサポートへ舵を切りだしているが、運動・食事支援にとどまっており、医師が関与するサービスはなかなかできていない」と岩崎氏。
KDDIと日本エンブレースはMCSの活用シーン拡大に共同で取り組む
MCSは医療介護従事者に無料で提供されており、この重症化予防のアイデアの場合、連携する生命保険会社から収益を得るビジネスモデルだ。