ノキアソリューションズ&ネットワークスは2017年11月2日、パブリックセーフティに関する記者説明会を開催した。
ここで言うパブリックセーフティとは、防災・減災、警察、消防、救急など向けのミッションクリティカルな無線システムのこと。米国や英国、韓国などでは、LTE技術を利用した「パブリックセーフティLTE」の活用が進んでいる。
日本では現在、地方自治体などに使われている900MHz帯自営システムへのLTE技術導入に向けて、総務省で作業が行われているところだ(関連記事:900MHz帯自営システムにLTE技術を導入へ)。
「災害で一番重要なのは、最初に現場に派遣される消防や自衛隊の方の通信。第一線で働く方が、より情報共有できることで、生存者を増やすことができる」
ノキア 取締役の西原政利氏は、このように災害対策における通信の重要性を説明。「通信技術の発展を有効活用すべき」と、パブリックセーフティLTEの必要性を訴えた。
ノキアソリューションズ&ネットワークス 取締役 西原政利氏
日本では現状、パブリックセーフティに第二世代携帯電話に相当する技術が使われているが、LTEを採用するとどんなメリットがあるのか。
パブリック・セーフティ担当ソリューション・マネージャーの霜越潔氏は、パブリックセーフティLTEの特徴を大きく4つに整理して説明した。
ノキアソリューションズ&ネットワークス パブリックセーフティ担当
ソリューション・マネージャー 霜越潔氏
1点目は通信速度だ。パブリックセーフティ用の自営無線システムとしてはこれまで、「海外ではTETRAなど、日本では独自のものが使われている」(霜越氏)。これらの通信速度は数百kbpsときわめて低速。LTEを採用することで、「災害が起きた時、現場で何が起きているのか。音声や低速データ通信だけではなく、高速データ通信を使って、映像やセンサー情報も共有できる」とした。
2点目はスケールメリットである。パブリックセーフティのグローバルでのユーザー数は2020年に約1000万の見込みだ。これに対して、商用LTEサービスは36億台と市場規模が段違い。そのため、「LTEのほうが、より廉価で最適な機器が使える。経済的なことを考えると、グローバルで使われているもののほうがいい」とした。
3点目は、機能の高度化が可能な点だという。標準化の進展に従って、セルラー技術はどんどん進化していく。しかも、ソフトウェアの変更だけで高度化できる機能も多い。
そして、最後の4点目は、標準化されたオープンなシステムであることだ。ベンダーロックインから開放され、保守メンテナンスや部品などの供給リスクも軽減できる。
パブリックセーフティLTEの4つの特徴
LTEはパブリックセーフティ用に作られた無線システムではないが、Push-To-Talk/Videoや救急活動従事者を優先接続する機能など、パブリックセーフティ向けの機能強化も進んでいるという。
通常のLTEにはない、パブリックセーフティ向けの機能をアドオンできる
記者会見では、応答がない救急隊員の端末を強制的に起動させ、周りの映像や音声を確認するデモなどを実施。また、災害で通信がダウンしたエリアの緊急バックアップなどに使える可搬型LTEネットワークも披露された。