横浜市は今年4月からオープン・イノベーションによる新産業・新事業の創出に向けた取組の一環として「IoTオープンイノベーション・パートナーズ(I.TOP横浜)」を立ち上げ、参画する企業・団体の募集を行っている。この取組を市内の企業や市民に周知するとともに、交流・連携することを目的として2017年6月20日、キックオフイベントが開催された。
キックオフイベントではIoTセキュリティやドローン、通信ネットワークなどいくつかのテーマ別に講演も行われた。その中で、 ソフトバンクIoT事業本部 事業企画統括部 統括部長の桑原正光氏は「ソフトバンクが描くIoTの世界」をテーマに講演した。
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ソフトバンクIoT事業本部 事業企画統括部 統括部長の桑原正光氏 |
インターネットにつながるデバイスの数は、2020年には300億になるとも500億になるとも言われている。いずれにしろ、18年にはIoTデバイスがモバイル端末を逆転すると予測されているという。
IoTを支えるネットワークのLPWA(Low Power Wide Area)には、免許が必要で通信事業者が運用するLicensedと、WiFiのように免許が不要で誰でも運用できるUnlicensedの2通りある。
ソフトバンクは、前者については昨年11月にNB-IoT(NarrowBand-IoT)を用いた屋外での実証実験を国内で初めて実施し、今年夏以降にサービスを開始する予定。後者については、静岡県藤枝市内の広域にLoRaWANのネットワークを敷設し、併せて温湿度センサーや人感センサーなどの対応デバイスも提供している。このIoTプラットフォームを活用した実証実験については公募を実施しており、6月20日現在、11社が選定された。橋梁管理や水位監視などの「防災」、認知症高齢者の行方不明を防止する「みまもり」のほか、「商業支援」や「機器試験」など多岐にわたる。また、藤枝市でも児童の現在地の確認を低消費電力で行える見守りシステムの構築を予定している。
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静岡県藤枝市の実証実験は公募で11社が選ばれている |
ところで、スマートホームはエネルギーマネジメントと居住者の健康管理、家電マネジメントというように複数の業種業態のデータを掛け合わせることで実現する。「産業やデータの横断的な連携を可能にするためには、IoTプラットフォームの存在が不可欠になる」と桑原氏は指摘した。
ソフトバンクではエンドツーエンドでのソリューションを提供するとともに、さまざまな企業との協業を可能にすることを目的として、IoTプラットフォーム構想を描いている。
ソフトバンクが描くIoTプラットフォーム構想 |
このIoTプラットフォーム構想で重要な役割を果たすのが「Network Adapter」だ。IoT向け通信は用途に合わせて、複数のネットワークを“適材適所”に使い分けるようになることが予想される。そうなると、「通信環境に合わせた通信プロトコルを制御する必要ある。それをNetwork Adapterという1つのインターフェースとして提供しようと考えている」(桑原氏)という。
IoTのユースケースには、ビル内のトイレや会議室の空室状況の監視、スマートパーキング、ガソリン・灯油の配送業務の効率化支援などが想定されている。桑原氏は「今後、個別のユースケースだけでなく、それぞれのデータを掛け合わせて新しいビジネスが生まれるようになる。そこに我々が構想しているIoTプラットフォームを提供していきたい」と語り、講演を締めくくった。