耳が聞こえにくくなったと自覚している人のうち、補聴器を使用している人の割合はわずか13.5%――。日本補聴器工業会が調査した数字だ。
難聴になると人とのコミュニケーションがしづらくなり、ストレスを感じるようになる。外を歩いている最中に自動車や自転車が接近していることに気がつけなければ、事故に遭遇するかもしれない。それにもかかわらず、大半の難聴者が補聴器を使用していないのが実態だ。
なぜだろうか。
IoT技術を活用してオンライン補聴器調整サービスの提供に乗り出したNessa Japan(ネッサジャパン)が、日本国内で補聴器を使用していない高齢者300人を対象にイメージ調査を実施したところ、第1位に上がったのが「補聴器は高額」という回答で、2位には「耳に付けていると気になりそう」、3番目に「ボリューム調整やメンテナンスが面倒」という答えが上がった(図表)。補聴器に対してネガティブなイメージを抱いている高齢者が多いのだ。
図表 Nessa Japanが高齢者300人を対象に行った補聴器に対するイメージ調査
そんな状況を変えるべくシンガポールで3人の起業家が2015年10月に設立したのがNessaだ。補聴器の利用者を増やすために同社が重視したのは「補聴器の使用に伴う不便さや面倒くさを解消すること」だとオリビエ・カーノハンCEOは話す。
それを実現するのが、IoT技術によって遠隔から補聴器の調整を行うオンラインサービスである。日本法人のNessa Japanは2016年10月に国内でサービスを開始した。
Nessaのオリビア・カーノハンCEO(左)とエディ・チャンCTO
なお、Nessaは補聴器メーカーではなく、補聴器を販売する会社だ。現在、シンガポールに加えマレーシア、日本の3カ国で事業を展開している。同社の事業の特徴は、補聴器のユーザーがリアルな店舗に足を運ぶことなく、補聴器の購入と調整ができるようにしたことだ。