ネットワーク構築・運用を手がけるSIerがデジタル化時代に即してビジネスモデルを転換するには、どうすればいいのか。
この特集の第3回で述べたように、強みである設計・構築、運用に関わる技術とノウハウをデジタル化し、クラウドサービスとして提供することが1つの解になり得る。クラウド技術を使って迅速かつ低コストにサービス提供を行えるようにすることで、ユーザーに対して、コスト・期間をかけずに新たなテクノジーを利用できるという価値を提供するのだ。
これを体現した例がある。ネットブレインズが2014年1月に開始したUTM(統合脅威管理)販売ビジネスだ。
(左から)ネットブレインズ 代表取締役の古畑雅士氏、ソリューション事業部 セキュアソリューション営業部部長の福沢信生氏、ソリューション事業部 WG営業部の島崎将司氏 |
2年半で売上の柱に成長ネットブレインズは社員数27名の中小規模SIerであり、1995年の設立以降、大手SIerの下請けで行うLAN構築が売上の大半だった。だが、同社はリーマンショックをきっかけに事業変革に乗り出す。代表取締役の古畑雅士氏は「当時、売上は半分以下になった。そこから中堅中小企業をターゲットに直接、サーバーも含めたシステム構築や運用サポートの事業を広げてきた」と話す。
UTM販売ビジネスもそうした取り組みの1つだ。2014年1月から、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンのUTM製品と合わせて、その導入・運用を支援するクラウドマネジメントサービス「NetBrains Remote & Report Service(NBRS)」の販売を開始した。それ以前に、UTMのユーザー企業に直接提供していた運用サポートのノウハウをデジタル化し、クラウドサービスとして仕立て上げることで、より多くの顧客企業に提供できるようにしたのだ。
これにより、IT管理者がいない中小企業でもUTMを有効に活用できるようにした。セキュアソリューション営業部部長の福沢信生氏は「中小のお客様はセキュリティ対策の必要性を感じていても、UTMをどう運用していいかわからず導入を躊躇う。そこで、UTMと一緒にレポーティングと導入・運用支援を格安で提供すれば、他にないサービスになると考えた」と話す。
2年半前に始めたこのビジネスは、今や同社の売上の4 割近くを稼ぎ出すまでに成長している。
UTMとNBRSはリセラー経由の間接販売で展開しており、ゼロから開拓したリセラー数は現在100社を超え、年間のUTM販売台数は1200台にものぼる。そのうち7割以上がNBRSを合わせて導入しているという。