自動車とその周辺の様々なモノをつなぐ無線通信技術「V2X(Vehicle-to-Everything)」を巡って、通信業界および自動車業界の動きが慌ただしくなってきた。
V2Xとは、車両同士(Vehicle-to-Vehicle:V2V)、信号機や道路標識等の路側インフラと自動車(Vehicle-to-Infrastructure:V2I)、歩行者と車両間(Vehicle-to-Pedestrian:V2P)など、クルマとその周辺環境との間の通信を総称するものだ。
このV2X通信を、LTEをベースとしたセルラー技術で実現する規格として、クアルコムやファーウェイ、エリクソン、ノキア等が昨年来提唱してきたのが「LTE V2X」だ。9月末、その初期仕様が「Cellular V2X(C-V2X)」として固まるとともに、通信/自動車の両業界が実用化に向けて動き出した。
図表1 LTEベースV2Xのシナリオ |
3GPPで初期仕様が完成3GPPは9月26日、LTEベースのV2X規格として「C-V2X」の初期仕様の標準化が完了したと発表した。
今回策定された仕様はクルマ同士で通信を行うV2Vにフォーカスしており、2017年3月に完了するLTEリリース14に含まれる予定だ。このV2V通信は、端末間で直接通信を行う「LTE Direct」をベースに機能を拡張したもので、自動車業界側が求める低遅延化等の要件に応えている。
3GPPは引き続きV2I/V2P、さらにネットワークを介した通信(Vehicle to Network:V2N)を含め、LTEの自動車向け機能を強化していく方針だ。
さらに、上記発表の翌27日には、ドイツの大手自動車メーカー3社、アウディ、BMW、ダイムラーがエリクソン、ファーウェイ、ノキア、インテル、クアルコムとともに「5G Automotive Association(5GAA)」を結成。各社の研究開発リソースを統合して、5G技術の開発とコネクテッドカー向け通信ソリューションの実用化に取り組む方針を発表した。
この5GAAが開発するV2Xアプリケーションは、ITS(高度道路交通システム)で現在主流のDSRC(5.8GHz帯を使う狭域通信システム。自動車専用に開発されたIEEE802.11pをベースとする)ではなく、C-V2Xがベースとなると見られる。
自動車は、5Gのユースケースの1つとして大きな期待が寄せられている分野であり、LTEをベースとしたC-V2Xは、その“先駆け”とも言える。初期仕様が固まったことで、C-V2Xをベースとした自動車向けソリューションの開発が加速しそうだ。