モバイル市場に挑むブロケードの勝機「仮想化がベンダーロックを突き崩す」

米ブロケードが、SDN/NFVを軸としたモバイルインフラ事業に本腰を入れてきた。データセンター向け事業のノウハウを活かしモバイルエッジコンピューティングなどの新分野にも挑戦する。同社モビリティ&モバイル・ネットワーク担当CTOのケビン・シャッツケーマ氏に話を聞いた。

――今年1月、昨年買収した米コネクテム(Connectem)のvEPC(仮想化モバイルコア)製品を軸に、モバイルインフラ市場に参入しました。

シャッツケーマ ブロケードは、デルやEMCなどとの協業により、ファイバーチャネルを中心としたソリューションをデータセンターや企業向けに展開してきました。こうした我々のパートナーも近年、NFVに取り組んでおり、新しいビジネスを一緒に育てていけるのではないかと考えたことが、モバイルインフラ市場に参入した動機の1つです。

また、NFVでは、既存の通信事業者向けベンダーが従来展開してきたものとは根本的に異なるアプローチが必要とされます。この点がブロケードの強力な武器になると考えたことが、最大の動機といえるでしょう。

――根本的に異なるアプローチとは何ですか。

シャッツケーマ 大きく2つのポイントがあると思います。1つは、vEPCをはじめとするVNF(仮想ネットワーク機能)などを最初から仮想化環境を前提に開発していることです。これにより、ハードウェアの効率的な利用や、需要に応じて規模を柔軟に変化させるスケーラビリティを実現しています。これらが、ハードウェアベースのネットワーク機器の機能を単にソフトウェア化して提供していることが多い既存ベンダーに対する大きな差別化ポイントになっています。テレフォニカとの実証実験でも、我々のvEPCやvCPE(仮想構内機器)のスケーラビリティが特に評価されました。

もう1つは、オープンスタンダードに準拠する形で製品開発しており、通信事業者や他のITベンダーが構築する多様なプラットフォームに容易に導入できる点です。

米AT&Tが昨年から進めているvCPEシステムの構築に、当社のSDNコントローラや仮想アクセスルーターなどが採用されているのですが、これらの点が評価されたと考えています。

――すでに大手通信事業者の商用環境にも採用されているのですね。

シャッツケーマ SDN/NFVの登場を機に、通信事業者の意識が変わってきているのだと思います。通信インフラ市場はここ20年間ほどベンダー主導で展開されてきており、特定のベンダーの製品に過度に依存する「ベンダーロックイン」の弊害も生じていました。そこで今、通信事業者の側にネットワーク設計の自由度を取り戻そうとする機運が高まっています。

SDN/NFVを活用してネットワークを再構築しようとする米AT&Tの「Domain2.0」プロジェクトはその典型といえるでしょう。こうした動きが広がれば、新規参入のベンダーがキープレイヤーとして通信事業者向けビジネスを展開できるようになると思います。

月刊テレコミュニケーション2016年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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