――SDNやNFVの導入が着実に進んでいますが、今後どう発展していくとお考えですか。
中尾 SDNとNFVの両方の技術を組み合わせて活用しようという話は、今どこでも議論されていますが、最近SDNとNFVを合体させ、もっと大きな変革を実現しようという動きが加速しています。
例えば、近頃流行っているホワイトボックススイッチもその動きの1つです。
――ホワイトボックススイッチとは、ネットワークOSを搭載しない汎用スイッチのことですね。従来のスイッチはソフトウェアとハードウェアが一体で販売されてきました。一方、ホワイトボックススイッチはx86サーバーと同じように、ソフトウェアとハードウェアが分離しています。
中尾 だから、自分で選択・開発したソフトウェアを入れられます。
SDNを説明する際には、アプリケーション、コントロールプレーン、データプレーンの3層モデルの図がよく使われます。この3層のうち、どこがSoftware-Definedなのかというと、コントロールプレーンから上。パケットを転送するデータプレーンは、プログラマブルではありませんでした。しかし、ソフトウェアを自由に選択・開発できるホワイトボックススイッチなら、データプレーンにもプログラマブル性が出てきます。
――汎用ハードウェア上のソフトウェアでスイッチ機能を実現するのですから、NFVとよく似ています。
中尾 「SDNとNFVはだんだん似通ってきている」というのは、多くの研究者の共通認識です。
そこで標準化の世界では、「SDNとNFVを合体して制御しよう」という話も出ているのですが、そうしたなかSDNとNFVの次の進化の方向性を示すキーワードとして使われ始めたのが「ネットワークソフトウェアライゼーション」です。
ITU-Tは、IEEEの学会「Network Softwarization」での議論を元にして、ネットワークソフトウェアライゼーションについて、「『ネットワークの機器や機能をソフトウェアプログラムによって具現化し、より柔軟かつ迅速にサービスを構築・運用していく』という通信ネットワークにおける大きな変革を意味し、全ての焦点技術に関連する重要技術」と説明しています。
SDN、NFVと言うと、単なる個別のテクノロジーの話になってしまいます。これに対して、「ネットワークのソフトウェア化の動きをもっと大きく捉え、ソフトウェア化できるところは全部ソフトウェアで作っていこう」というのがネットワークソフトウェアライゼーションの理念です。