競合のNFVは「単なる移植モノ」その中核製品となるのが、LTEコア網を仮想化するVirtual EPC(以下、vEPC)製品の「Brocade VCM(Virtual Core for Mobile)」だ。昨年買収したConnectem社のvEPCをベースとしたものである。
このVCMは競合他社のvEPCに対して大きな優位性を持っていると、チェン氏は話す。
これまでEPCを構成する各ノード(S/P-ゲートウェイ、MME、HSS等)を物理アプライアンスで提供してきた既存ベンダーは、それらをソフトウェア化した仮想アプライアンスをvEPC製品として提供している。同氏によれば「物理のEPCをソフトウェア化して汎用ハードウェア上に移植しただけ」だ。
一方、ConnectemのvEPCは当初から仮想環境への導入・運用を想定して開発されたものであり、「1つのソフトウェアパッケージ内にEPCの各能を統合し、包括的な製品として提供できるのが強み」だ。そのため、他ベンダーに比べて低コストに導入でき、かつ短期間でのサービスインが可能だという。
そして、このVCMの優位性をさらに高める新技術が「ポータブル ユーザープレーン」である。EPCのユーザープレーンとコントロールプレーンを分離する技術だ。
モバイルネットワーキング担当CTOのケビン・シャッツケーマー氏は、「ユーザープレーンをエッジ側に置き、コントロールプレーンは従来通りOSSレイヤで一元的に運用管理できる」とその効果について述べる。「コンテンツやアプリケーションを加入者により近いところで提供したいという事業者のニーズに応えることができる」のだ。
これは、5G(第5世代移動通信システム)向けにモバイル業界で提案・検討が進められている新技術の1つ「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」の実現にもつながる。MECとは、超低遅延な通信サービスを提供したり、大容量コンテンツの配信を効率的に行うといった目的のためにモバイル網のエッジ側にコンピューティングリソースやアプリケーションを配置する手法のこと。
ブロケードはこのMECを「モバイル業界に非常に重要なイノベーションをもたらすもの」と位置付けており、VCMと同時に、モバイル網でMECを実現するための基盤製品「Brocade MEC Platform」も発表した。MECは前述の通り5G向けに検討が進められている技術ではあるが、「ブロケードは、そのメリットを現行(4G)インフラでも享受するための支援をしていく」とシャッツケーマー氏は話す。