――学生時代に起業し、このたび東証一部上場も果たしました。最近の市場環境をどう見ていますか。
間下 本格的に事業を開始したのが2004年ですから、今年で丸10 年を迎えたことになります。この間、会議システムを含むビジュアルコミュニケーション市場を取り巻く環境は激変しました。
最大の転機となったのが2008年のリーマン・ショックで、企業では出張経費の削減目的により会議システムの活用ニーズが生まれ、当社への問い合わせも10倍に増えました。また、企業が投資を抑制し設備を保有すること自体を見直す方向になったのを契機に、クラウドサービスに対する理解が深まりました。
その結果、会議システムも社内だけでなく社外でも使えるSaaS型が当たり前になっています。セキュリティの関係でインターネット接続が認められない金融機関や、オンプレミスで導入した方が割安になる大手企業など一部の例外を除き、今ではお客様の99%がSaaS型を選択されています。こうした流れは大きなパラダイムシフトであり、当社にとって追い風になっていると言えます。
ブイキューブ 代表取締役社長 CEO 間下直晃氏 |
――最近は、地方創生や女性活用をキーワードに政府が在宅勤務を後押しするなど、国をあげてワークスタイル変革の取り組みを推進しています。こうした動きもWeb会議システムのさらなる普及につながりますね。
間下 場所を問わない働き方を追求するかぎり、コミュニケーションが必ず課題になります。従って、ワークスタイル変革ではWeb会議システムのようなコミュニケーションツールが鍵を握っています。
当社はこれまで、多くの企業が安価にかつ簡単に使える仕組みを提供することで、どこでも働ける環境作りを目指してきました。
この9月にWeb 会議システム「V-CUBE ミーティング」のメジャーバージョンアップを9年ぶりに行いました。映像圧縮や映像転送、音声コーデックなどあらゆる技術を最新のものに入れ替えた結果、さらに品質が向上しています。
最近ではPCだけでなく、スマートデバイスからWeb会議に参加する機会が増えていますそこで今回のバージョンアップでは「モバイルファースト」をコンセプトに、不安定なネットワーク環境でも安定して使えることを目指しました。
リリース前の3カ月間、社内で試したところ、旧バージョンと比べて利用時間が2.4倍に増える一方、1回あたりの会議時間は20%減少しました。外出先や自宅など利用環境を選ばなくなったことで、ちょっとした打ち合わせなどにも頻繁に使われるようになったことを意味しています。
Web会議システムは、「直接会って話をしたい」という人間の根本的な欲求に応えるものであり、さらに普及していくと期待しています。
――スマートデバイスからWeb会議に参加するようになったことで、利用シーンも広がっているのではありませんか。
間下 そうですね。例えば鉄道会社では事故現場の様子をスマートデバイスのカメラを使って指令室に伝えるなど、会議以外のコミュニケーションへの活用が広がっています。
我々は創業時から「ビジュアルコミュニケーション」という概念を提唱してきましたが、当時はなかなか理解されませんでした。ここにきてようやく、社内会議にとどまらない、ビジネスにおけるあらゆるコミュニケーションをつなぐ役割としてWeb会議システムが認知されるようになってきたと実感しています。