自らは無線インフラを持たずに、移動通信事業者(MNO)の設備を借りてモバイルサービスを提供するMVNOの契約者数が高い伸びを見せている。
2014年3月時点で739万だった携帯電話・PHS、BWA(Broadband Wireless Access)を合わせたMVNOの契約者は、今年3月には前年同期比29%増の952万となった。移動通信全体に占めるMVNOのシェアも6.1%に達している(図表1)。
図表1 MVNO(MNOであるMVNOを除く)サービスの契約数の推移 |
この高い成長を牽引するのが、通信速度などに制限を設けることでMNOより格段に安価な料金を実現した「格安SIM」「格安スマホ」で知られるようになった「SIMカード型」(以下、SIM型)と呼ばれるMVNOだ。2014年3月時点で173万だったSIM型MVNOの契約数は、今年3月には前年比89%増の326万となった(MM総研調べ)。
SIM型MVNOの伸長には大きく2つの要因があると見られている。
1つは、「レイヤ2接続」と呼ばれるMNOとのネットワーク接続形態で、通信速度の制御を行うP-GW(Packet data network GateWay)などの設備を自前で保有するタイプが大手MVNOを中心に増加したことだ。これによりMVNOが自らトラフィック制御や課金などを行う仕組みを構築して、独自の料金やサービスメニューを提供することが可能になった(図表2)。
図表2 レイヤ2接続とレイヤ3接続 |
もう1つは、MVNOが携帯電話事業者に支払うネットワークの利用料(接続料、サービス卸料金)の低廉化が、データ通信分野で急速に進んだこと。LTEの普及でビットレートあたりのネットワークコストが劇的に下がり、これを反映する形で年30~40%という大幅な接続料金の引き下げが実現した(図表3)。
図表3 携帯大手3事業者のレイヤ2接続料の推移 |
MVNO各社が、接続料の低廉化を先取りする形で料金値下げを進めてきたのに対し、ARPUを維持したいという思惑から携帯電話事業者はコストの低下を必ずしも料金に反映させていない。結果、料金面でも競争力が生まれたのである。