ファーウェイがSDN/NFVで新技術開発――通信事業者のニーズに応えるクラウド化製品アーキテクチャ

通信事業者向けのSDN/NFVがいよいよ商用フェーズに入ってきた。大手通信インフラベンダーのファーウェイは、SDN/NFV分野での新技術の開発を進め、オープンソースのIT技術と通信技術、双方の強みを活かしビジネスの主導権を狙う。ファーウェイ・ジャパンの邵禹(シャオ・ユウ)氏に、同社のSDN/NFV戦略を尋ねた。

NFVで25、SDNで20以上の案件が商用段階に――仮想化IMS以外でも、SDN/NFV製品の引き合いは増えているのですか。

シャオ かなり多くなっています。コアネットワーク分野ではNFVではグローバルで60以上のPoCが行われ、25以上が商用段階に入っています。仮想化IMS/EPCではファーウェイはグローバル市場でトップの位置にあるのです。また、仮想化PCRF(ポリシー・課金管理装置)でも、イギリスの大手通信事業者と商用契約を結びました。「Interop Tokyo 2015」で業界最高のパフォーマンスをもつ仮想化ルーター/ファイアウォールを発表しました。これまで蓄積してきた当社のIPとセキュリティ分野での経験を生かしたこの製品は高い注目を集め、PoCが数多く行われ、引き合いもたくさんありました。

SDNでは70以上のPoCが実施され、16以上のプロジェクトが商用段階にあります。各地で急増するプロジェクトを本社が随時に集計しているわけではないので、数はまだ多くなると思います。

ファーウェイのSDN/NFV製品の導入状況
ファーウェイのSDN/NFV製品の導入状況

――ファーウェイのNFV製品が通信事業者に受け入れられた理由はどこにあるのでしょう。

シャオ 理由の1つに、当社が欧州や中国の多くの通信事業者と深い協業関係を作り上げていることがあると思います。お客様とともに多くのプロジェクトを進めてきていますし、ボーダフォンやドイツテレコムなどとは共同で「ジョイントイノベーションセンター」を開設し、お客様のニーズを早い段階でキャッチしてそれに応えられるソリューションの研究開発に取り組んでいます。こうした点がお客様に評価いただいているのだと思います。

もう1つ大きな理由として、ファーウェイがNFVに特に積極的に取り組んでいる点があげられるでしょう。自社製品をVNFとして提供するのは、ベンダーにとってかなり勇気がいることなのです。これまでのビジネスがなくなってしまう可能性があるわけですから。当社はこの冒険に敢えて挑みました。お客様にとって価値があるものであれば、我々はそれに投資し、ニーズに応えていかなければいけないと考えているのです。業界でのトップ位置を保っていくために、当社はこの分野の新たな技術開発にも非常に大きなリソースを割いています。

――技術開発ではどのような分野に力を入れているのですか。

シャオ 多くの領域で先頭を走っている当社は、NFV/SDNの全般にわたりリソースを投入し、MANOや仮想化プラットフォーム、SDNコントローラなど共通技術の開発に専門チームを立ち上げ、重点的に投入しています。VNFについては、各プロダクトラインの主導で進めていきます。例えば、コアネットワークプロダクトラインは仮想化IMSに戦略的な投入を行っています。次に2分野を中心に説明します。

NFV/SDN全体を統括するオーケストレーターは、私共が特に力を入れている分野の1つです。当社はこれでVNFを管理するだけでなく、伝送系のSDNを含めたエンド・ツー・エンドとクラウドのオーケストレーションを実現していきたいと考えて、プロジェクトを立ち上げたところです。このソリューションを使って、通信事業者はアマゾンなどのクラウドサービスプロバイダーを上回る優位性を手に入れることができます。

もう1つ、当社が力を入れているものに仮想化EPCの新しいアーキテクチャがあります。他の多くのベンダーは、唯単に仮想化を行うだけで、クラウドの特徴に応じた最適化をしていないため、NFVのメリットを生かしていません。

そこで当社はEPCの機能自体を見直し(1)伝送系のロードバランスレイヤ、(2)サービスプロセスレイヤ、(3)データレイヤの3層に分離した仮想環境向けの新しいアーキテクチャを開発しました。これが当社の仮想化EPCの他社との大きな差別化ポイントになると考えています。

――新しいアーキテクチャにはどのような利点があるのですか。

シャオ 従来型の仮想化EPCではアプライアンスで提供されているソフトを移し替えているので、この3つのレイヤのいずれかの部分で障害が起きると全体の機能に影響します。当社の製品は、例えばサービスプロセスレイヤで障害が起きても、他のモジュールで機能を補完して、他のレイヤを問題なく使うことができます。システム全体の信頼性と柔軟性が大きく向上します。

加えて我々が重要だと考えているのが、このアーキテクチャを用いることでデータセンターの間をまたいだオーケストレーションが容易に実現できるようになることです。今年3月にバルセロナで開かれたMobile World Congress2015では、ドイツテレコムと共同で3カ国に存在するデータセンター上に構築されたシステムを一体運用するデモを行いました。こうした技術を持っているベンダーは現在のところ当社以外にはないはずです。

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