ITホールディングスグループ(以下ITHDグループ)のTISとインテックは2010年7月26日、SaaS型着信管理サービス「Callノート」を8月2日より共同で提供すると発表した。Callノートは、ITHDグループが7月21日に発表していた「クラウドテレフォニー」事業のサービス第1弾となるもの。広告代理店やECサイトなど向けに、電話問い合わせの広告効果を「見える化」するためのソリューションとして提供していく。
26日に開かれた記者発表会では、ITHD執行役員 事業推進本部 本部長の荒野高志氏がまずクラウドテレフォニー事業全般について説明した。荒野氏によれば、クラウドテレフォニーとは、音声コミュニケーションをはじめとするテレフォニー技術をWebシステムに深く組み込むことにより、Webに新たな付加価値を提供するためのクラウドサービスのことだという。
(左から)ITホールディングスの荒野高志執行役員、インテックの山田康成グループマネージャー、TISの岡部耕一郎エキスパート |
荒野氏は「IP電話もSkypeもインターネット技術を使った電話サービスの実現だが、Web上に電話を載せただけ。真の意味での融合ではない」と指摘。そのうえで、「音声とWebをうまく連携させ、新しい価値を創出していくことが重要」と語った。
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「クラウドテレフォニー」の概要[クリックで拡大] | 「クラウドテレフォニー」の着眼点[クリックで拡大] |
では一体、その「新しい価値」とはどのようなものなのか――。ITHDグループでは、クラウドテレフォニー事業を開始するにあたり、欧米での動向をもとに、日本でのマーケット調査を実施したという。欧米ではWebイエローページやオンラインゲームチャットなど、ソフトフォンとWebシステムの連携例が多くある。だが、ヘッドセットでの通話やボイスメールが根付いていない日本では、「欧米での実績はそのまま適用できない」。そこでITHDグループでは、日本での活用シーンについて顧客と議論。そのディスカッションから導き出されたのが、着信履歴や電話番号、GPS、通話内容など、テレフォニーで取得できるあらゆる情報をWebで活用することによる、新しい価値の創出だという。そして、その着眼点を具現化するサービスの1つめとなるのがCallノートである。
リクルート「ホットペッパー FooMoo」が採用
Callノートに関する具体的な説明はインテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 N&O事業推進部 グループマネージャーの山田康成氏とTIS 産業事業統括本部 サービス&コミュニケーション事業部 サービス第3部 エキスパートの岡部耕一郎氏が行った。
Callノートは次のような課題を解決するクラウドサービスだ。例えば、ある消費者が旅行情報サイトを訪問したとする。そして、そのサイト内の広告で紹介されていたツアーに興味を持ち、申し込みたいと考えた。しかし、申し込み前に、いくつか確認したいことがある。そこで、電話問い合わせを行い、その電話から申し込みを行った。
多くのWeb広告メディアやECサイトでは、効果測定やサイト改善などのため、サイト訪問者の行動履歴の分析を行っている。しかし、上記例の場合、Webサイトから電話に移行したところで、実際には申し込みまで到達しているのに、サイトから「ドロップ」したと見なされてしまうのだ。Callノートを活用すると、こうしたケースでも「見える化」できるようになる。
具体的な仕組みは以下の通りだ。Callノートが払い出した050番号や0120番号などの「仮想電話番号」をWebサイトやチラシなどに掲載。消費者がその「仮想電話番号」に発信すると、ITHD側のIP電話交換機経由で広告クライアントやECサイトのコールセンターなどに転送される。どの「仮想電話番号」から転送されてきたかによって、どの媒体を見て電話をしてきたかが分かるというわけだ。
「Callノート」誕生の背景[クリックで拡大] | 「Callノート」全体イメージ図[クリックで拡大] |
Callノートには音声ガイダンス機能も付いており、コールセンター側での着信時に「○○をご覧になったお客様から電話です」など、あらかじめ設定した音声を流すことも可能。また、レポート機能を備え、電話番号ごとの着信履歴の分析も行える。さらに、既存の業務システムと連携させるためのAPIおよびSIサービスも提供する。
インテックの山田氏は「例えば広告代理店の場合、従来は媒体の発行部数やページビューでの提案だった。しかし、『発行部数は10万部で○件の電話問い合わせがあった』といった提案が行えるようになる」とCallノートのメリットを説明した。
また、TISの岡部氏はCallノートの特徴として、同時1000回線以上など大規模ニーズへの対応も可能な点や、仮想電話番号はリアルタイムに作成でき即時利用できる点などを強調。すでにCallノートは、リクルートが運営するグルメサイト「ホットペッパー FooMoo」で採用されているという。
Callノートの利用料金は、初期契約料30万円、月額基本料10万円~、通話料10円/3分(転送先が固定電話の場合)。このほか、仮想電話番号の発行手数料が1番号当たり500円、仮想電話番号の管理費用が1番号当たり月額100円などの費用がかかる。
Callノートの売上目標は3年間で10億円。クラウドテレフォニー事業の第2弾となるサービスも近々発表する予定だという。