SDN(Software-Defined Network)が企業ネットワークの領域に浸透し始めている。
これまではSDNスイッチ/SDNコントローラともに、性能・機能面でも価格面でも、データセンター/クラウド事業者をターゲットにした製品が大半を占めていた。だが、2014年からベンダー各社が企業LAN/WANへの導入に適した製品を拡充し、「企業向けSDN」を売り込むため、ユースケースの開拓と販売パートナー/SIerを巻き込んだ営業体制の強化を進めている。
この動きは、企業ネットワーク市場とベンダーの勢力図に変化をもたらしそうだ。企業向けSDNソリューションの販売は機器の導入・更新に加え、ネットワークと連動するアプリケーションの開発・販売やインテグレーションビジネスを生み出すからだ。また、ネットワークの構造と運用法を変えるSDNの革新性は、長い目で見れば、二番手以下のベンダーがその地位を押し上げるポテンシャルを持っている。彼らが市場を掻き回し、成長エンジンとなる可能性は十分だ。
では、SDNはどのような形で企業LAN/WANに浸透していくのだろうか。
データセンター向けと同等の成長率が見込まれる企業SDN市場
まず、企業向けSDN市場の現状を把握しよう。
国内の企業向けSDN市場規模(図表1)は、IDC Japanが3月31日に発表した国内市場動向分析によると、2014年時点で18億8600万円となっている。2015年には35億6600万円、2019年には168億8400万円に達するとしており、2014~2019年の年平均成長率(CAGR)は55.0%と急速な成長を予測している。
図表1 国内データセンター、企業ネットワークSDN 市場 売上額予測、2012年~2019年 |
なお、データセンター向けSDN市場規模は、企業向けの3倍弱となる51億7800万円(2014年)、2014~2019年のCAGRは54.8%と予測する。DC向けと企業向けが、ほぼ同程度のスピードで成長していくと分析している。
また、ベンダーおよび企業ユーザーの動向についても分析しており、コミュニケーションズグループマネージャーの草野賢一氏は、「予想したよりも導入が進んでいる」と話す(図表2)。
図表2 企業のSDN導入/検討状況 |
調査結果では、企業向け市場で先行しているベンダーとしてNECを挙げているが、同社が既存のネットワークへ部分的にSDNを導入するための製品を提案して導入実績を増やしていることについて、「一般的な企業へのアプローチとして現実的で、良いやり方だと思う。他にも同じような動きがでてくれば」と期待を語る。
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー 草野賢一氏 |
では、どのようなベンダーが企業向けSDNの取り組みに注力しているのか。草野氏は「ネットワーク機器のOpenFlow対応という部分で見れば、各社とも盛り込んできている」としたうえで、主要ベンダーの動きを次のように概観する。
「シスコシステムズとNECがデータセンターと企業向けの両方をやっているほか、企業向けに積極的なのは、国産ではアライドテレシス、海外系ではHP(ヒューレット・パッカード)だ」