シスコシステムズが昨年発表した調査報告によると、世界の公共機関は今後10年間で、IoEにより4.6兆ドル(約550兆円)もの経済価値を生み出す可能性があるという(民間部門の14.4兆ドルを加えると、総額では19兆ドルの経済価値だ)。
ちなみに、IoEとはInternet of Everythingの略。シスコではモノにとどまらず、ヒトやプロセスなどすべてをインテリジェントに連携させるという意味から、IoEというコンセプトを提唱している。
4.6兆ドルというと途方もない金額を聞いても、今はまだ夢物語にしか思えないかもしれないが、すでにIoT/IoEを活用して大きな価値を創出している公共機関はある。
例えば、フィンランドでは、ゴミの収集缶にセンサーが取り付け、回収が必要になると信号を出すようになっている。この仕組みにより、無駄なゴミ収集を40%も削減できたという。
また、フランスのニース市では、駐車場の空きスペースをドライバーに教えるスマートパーキングによって、交通渋滞が3割減少。駐車料金収入の増加や、CO2排出量の削減といった効果も得ている。
水道のスマート化だけでも年間70億円のコスト削減
このように公共機関によるIoT/IoEへの取り組みは世界各地ですでに始まっているが、なかでも注目されているのがスペイン・バルセロナ市のスマートシティプロジェクトだ。2014年3月には、EUにおいて最もイノベーションを推進する都市にも選定されている。
バルセロナ市では、市内全域でWi-Fiを整備。行政サービスや街路樹の管理、公共施設のエネルギー管理、駐車場管理などをスマート化している。また、センサーが収集したデータとその解析結果は、オープンデータとして第三者に開放されており、民間企業も都市向けサービスの改善のためのアプリケーションを開発することが可能だ。
バルセロナ市の助役によると、水道管理のスマート化により年間5800万ドル(約70億円)のコスト削減に成功しているほか、スマートパーキングは年間5000万ドル(約60億円)もの駐車料金収入の増収効果をもたらしているという。さらに、4万7000人の新しい雇用も生み出されたそうだ。