金沢市中央卸売市場にあって、青果物ならびにその加工品を取り扱う丸果石川中央青果。日本全国からさまざまな農作物が集まり、ここを経由して石川県内の食卓へと届けられていく。県民の“食”を支える流通網の中核拠点である同社にとって、携帯電話は無くてはならないツールの1つになっている。
社員の多くは広大な市場内を常に動き回りながら業務を行う。事務所はその2階にあり、1階の市場にも内線電話は置かれているものの、そこにかけても相手は容易に捕まらない。また、全国の農産地や県内の小売業者などへの外出も多い。
取引先からの電話に応じるのも携帯電話がなければ一苦労だ。事務所に電話が入ると交換手が構内放送で担当者を呼び出し、1階の電話機に転送する。長らくそうした運用を続けてきたが、それでは、何よりスピードと効率性が求められる流通業務に大きな支障をきたす。
携帯電話はこうした課題を解決したが、同時に大幅なコスト増をもたらした。市場にいる社員は個人の携帯を業務に流用し、事務所とのやり取りに固定携帯の外線を利用。個人携帯の流用により端末コストこそ節約したものの、支給する携帯電話料金と、事務所から社員の携帯にかける“内線代わり”の電話料金は、同社にとって大きな重石となっていた。
「これならイケる」
執行役員・総務部部長の南条茂行氏は、嵩む一方の通話コストを削減する方策に悩んできた。これまでもさまざまな提案を受けたが、どれも今ひとつ決め手に欠けた。NTTドコモからはFOMA同士で構内通話ができるサービスを提案されたが、期待するほどのコスト削減効果は得られそうにない。「ホワイトプラン」を提供し始めたソフトバンクにも話を聞いたが、社員が出向く農産地は電波の届きにくい場所が多かった。
「どれもしっくりこない、踏み切れないままにズルズルと来ていた」という南条氏が09年春に出会ったのが、当時KDDIが提供開始したばかりのFMCサービス「KDDIビジネスコールダイレクト」だった。社員の携帯同士、固定携帯間ともに定額通話が可能で、どこにいても内線番号で連絡できる。事務所で受けた取引先からの電話も携帯に内線転送できるため、連絡の効率も上がる。
南条氏はすぐさま導入効果を試算し、固定・携帯通話料を合わせて3割程度の削減が見込めると判断。老朽化していたPBXシステムの更改と合わせて導入を決定した。設計・施工は地元SIerの北陸通信工業が担当し、OKIネットワークスのIP-PBX「IPstage EX300」とFMC対応携帯約70台を導入(図表1)。KDDIからの提案を受けたわずか3カ月後の09年7月に、新システムが稼働した。
図表1 丸果石川中央青果のネットワーク構成図 |