IoT/M2Mカンファレンス2014 講演抄録SIMの管理コスト削減とeSIM推進を切り札に――HPが通信事業者/MVNOのM2Mビジネス支援にのり出す

日本ヒューレット・パッカードは、IoT/M2Mカンファレンス2014秋で「M2M/MVNOビジネス拡大を支える新基盤のStep1: 進化したサブスクリプション管理」と題する講演を行い、通信事業者/MVNOがM2Mビジネスを推進する上でSIM管理コストの抑制が直近の重要な課題となると指摘した。そのうえで、山本氏は「HPはM2M/MVNOビジネスを支える基盤の第一歩としてサブスクリプション管理ソリューションを提供し、隠れていて気付きにくいSIM管理コストの削減を支援していく」と述べた。

SIMの管理コストを削減するDSPソリューションを提供

ここで、通信事業者/MVNOのM2Mビジネスにおける特徴・課題について考えてみましょう。

M2Mビジネスの特徴の一つは、管理するSIMの数が膨大になることです。現在日本の通話・データ通信用の加入者数は約1億くらいですが、M2Mになると一桁多くなってくるでしょう。そして、SIMの出荷計画が始まってから実際に使われるまでの期間(WARM SIM)が従来のSIMに比べて非常に長くなることもM2Mビジネスの特徴です。

SIMのライフサイクルはSIMの出荷計画から始まります。この時点で既に番号(MSISDN/IMSI)というリソースが消費され、コストが発生しています。そして、SIMベンダー向けのSIM output fileを生成した時点でHLR(Home Location Register、モバイル・ネットワークにおける加入者情報データベース)/HSSのライセンス料というコストが発生します。

さらに、SIMが出荷されるとOSS/BSS(Operational Support Systems/Business Support Systems)での管理が始まり、この段階でもコストが発生します。SIMが店頭に並び、購入された時点で初めてSIMがプロビジョニングされ利用開始状態となり、ようやくこの時点から収益を生むことになります。

大規模数のSIMに対してこの「収益を生むまでの期間」を如何に短くするかが、通信事業者/MVNOにとってM2Mビジネスでの大きな課題になると考えています。

また、SIMの利用が中断した場合、そのままの契約にしておくと収益を生まないのに管理コストが発生する状態(SLEEPING SIM)となります。したがって、使われなくなったSIMに割り当てているリソースをいかに再利用するかといったことも、通信事業者のM2Mビジネスにかかるコストを抑制することにつながります。(図表4)

図表4 SIMのライフサイクルとTCO[クリックで拡大]
SIMのライフサイクルとTCO

このようなSIMの管理コストを如何に削減するかは、通信事業者/MVNOのM2Mビジネスにおける直近の課題といえます。この課題を解決する手段として、HPは「Dynamic SIM Provisioning」というソリューションを提供しています。

このソリューションは、SIMの出荷時にダミーの番号(IMSI/MSISDN)を割り当てておき、そのSIMが搭載されたデバイスが初めてネットワークに接続されたときに正規の番号(IMSI/MSISDN)を割り当ててアクティベーションする仕組みです。これにより、SIMの出荷計画から実際にSIM利用が始まるまでの間に発生しているコスト(隠れた見えにくいコスト)を抑制することが可能となります。(図表5)

図表5 SIM管理~SIM TCOの抑制[画像をクリックで拡大]
SIM管理~SIM TCOの抑制

この動的なSIMアクティベーションを実現する管理を元にして、M2Mのサブスクリプション管理(embedded SIM)やM2MサービスプロバイダによるSIM管理のセルフサービス化、SIMアクティベーション時の料金プラン・プロモーションやプラン選択、グループ会社も含めたマルチIMSI管理などに発展させ、M2Mビジネスの拡大を支えます。(図表6)

図表6 CSPビジネス領域の拡大をもたらすHP SIM管理
CSPビジネス領域の拡大をもたらすHP SIM管理

GSMAのRemote Provisioning Architecture に沿ってeSIMをサポート

次に、Embedded SIM(eSIM)を管理するソリューションについてお話しいたします。

eSIMの特徴は、ハードウェアコンポーネントでありデバイス製造時に組み込まれるものであることから、従来のSIMと違い、取り外しや交換を想定していません。さらに、通信事業者が所有するものではなくなります。そして、遠隔からネットワークオペレーターのプロファイルやクレデンシャル、アプリケーションを設定・投入する運用となります。

eSIMは、従来に比べてプロビジョニングのタイミングがビジネスに大きな影響を与えます。M2Mデバイスの製造過程で様々な試験が行われる際に通信が必要となりますが、eSIMのアクティベーションを円滑に行うことができないと、生産ラインに影響が生じます。また、デバイスモジュールの生産・試験の各工程において、eSIMの利用者(加入契約者)が必ずしも同一ではないため、一つのeSIMに対して複数回の加入契約管理が必要となります。さらに、eSIMが組み込まれたデバイスの利用場所、時期によって異なるネットワークオペレーターに接続されて利用されることも考えられます。

このような特徴を持つeSIM及びその管理についてGSMAやSIMAllianceなどで標準化の検討・仕様策定が進んでいます。HPは、世界有数の半導体メーカーでありM2M向けSIMカード提供の先進的企業であるST Microelectronics社との協業を最大限活用して、embedded SIM標準の検討状況や成果物をいち早く取り込んで製品に反映するアプローチを取っています。具体的には、GSMAで規定されているEmbedded SIM Remote Provisining Architectureに則り、HP DSP上にM2M Subscription Managerの開発を進めています。これにより、M2M/MVNO向け従来のSIM管理からembedded SIM管理へとシームレスな拡張が可能となります。

以上、SIM管理およびeSIM管理に関するHPのソリューションをご紹介しました。次に、M2Mコアネットワークに関するHPのソリューションの概要についてご紹介します。

人間による通話・データ通信とM2Mでは、端末数(SIM数)やトラフィック特性が異なるため、ROIの観点からM2Mのインフラをより低コストで運営することが不可欠となります。そこで、仮想化、NFV/SDNの技術を使ってM2M専用のネットワークを安価に構築する検討に対し、製品・ソリューション紹介のご要望をいただいています。HPは、世界各国で導入実績があるHP I-HSSを仮想化したHP vHSSや、ネットワークの利用状況に応じてポリシーベースでリアルタイムにトラフィックを制御するPCRFソリューションHP SNAPを提供しており、これらを利用したM2Mコアネットワークの構築についてご紹介、ご提案をしております。(図表7)

HP vHSSによるHSSの仮想化により、M2Mデバイスの激しい需要の変化に追随して、用途に応じて安価にかつ、素早く、用途毎にHSSを構築することが可能となります。また、高い接続品質が求められる医療機器のようなものから、保証型の接続品質までは求められない機器まで、バラエティーに富んだトラフィック品質の要件をHP SNAPのPCRFソリューションで制御可能です。

図表7 HP vHSS&PCRF for M2M Core Network[画像をクリックで拡大]
HP vHSS&PCRF for M2M Core Network

HPは、今回お話をさせていただいたSIM管理コストの低減を図るソリューションおよびコアネットワークの仮想化に対応するソリューションを始めとして、通信事業者/MVNOのM2Mビジネスを強力にサポートしてまいります。

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