NTTドコモは2014年10月14日、ネットワーク仮想化(NFV)への取り組みに関する記者説明会を開いた。この日、新たに発表されたのは、ベンダー6社と行った実証実験の成功である。
ドコモは今回、アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、エリクソン、ファーウェイ、NEC、ノキアソリューションズ&ネットワークスの6社と協力。異なるベンダーのハードウェアとソフトウェアの組み合わせでも、LTEのパケット交換機(EPC)においてNFVが適用できることを実証した。
今回の実証実験の概要 |
執行役員 R&D戦略部長の中村寛氏は、「ネットワーク仮想化についてドコモでは4つのメリットを考えているが、これらのメリットを最大限に実現するには、複数ベンダーの組み合わせが必要」と発言。今回の実証実験の成功により、ドコモのNFVへの取り組みは「実用化に向けて二歩も三歩も前進した」という見方を示した。
NFVがキャリアにもたらす4つのメリット
なぜ複数ベンダーの組み合わせが重要なのか――。その理由を説明する前に、まず中村氏はNFVの4つのメリットについて解説した。
1つめは、「通信混雑時のつながりやすさの向上」である。通信事業者のネットワークは現在、ソフトウェアと一体提供される専用ハードウェアによって構築されている。このため大規模災害の発生時などトラフィックが急増したときも、通信設備の容量を柔軟に増強することはできない。
だが、ハードウェアに汎用サーバーを採用し、仮想化技術を適用すれば状況は変わる。大規模災害などが発生した際には、動画など急を要さない通信用のリソースは減らし、通話やメール用のリソースを増やすことなどが可能になるからだ。
例えば、東日本大震災のときには、通常時の40~60倍の通信が発生。20回に1回しかつながらない状況が発生したが、ドコモも参加した総務省の研究開発プロジェクトでは、NFVの適用によって4回に1回はつながる状態へ改善できたという。
通信混雑時のつながりやすさ向上に貢献するNFV |
2つめのメリットは、「通信サービスの信頼性向上」である。キャリアのネットワークで用いられている通信機器の信頼性は、汎用サーバーと比べて非常に高い。また、システムは二重化されており、1つのハードウェアが壊れても、すぐ予備系に切り替わる。
ただ中村氏によると、課題もある。それは物理的な修理が必要なため、二重化運転の復旧に1~2時間かかることだ。これに対して、NFVの環境では、1台のハードウェアが故障しても、物理的な修理の必要なしに、別の汎用サーバーにソフトウェアを自動インストールすることで、「10分程度あれば、すぐに二重化運転が復旧する」。
通信サービスの信頼性向上にもつながるNFV |
3つめのメリットは、「サービスの早期提供」だ。従来は、ハードウェア構成の計画や調達、工事に時間がかかり、新サービスの提供には6カ月程度の時間を要していた。しかし、NFV環境では、共用ハードウェアプラットフォームからリソースを調達できるので、サービスの提供開始までの時間が「6カ月から1カ月」に短縮できるという。
そして最後の4つめが、高価な専用ハードウェアから汎用サーバーによる共用プラットフォームへの移行による「ネットワーク設備の経済性向上」である。