M2Mの活用で海外企業との競争が可能に
――地域によってM2Mの使われ方に差はあるのでしょうか。
ハロネン それぞれの地域で産業構造が異なりますから、利用形態も違ってきます。アジアの場合は家電や自動車などの製造業での利用が多いです。アメリカの場合は、製造業以外でも医療費が高いことからヘルスケアの分野でも使われるケースが多くなっています。
――日本のM2Mの利用にはどのような特徴がありますか。
ハロネン 自動車関連、テレマティックスなどの分野が非常に進んでいますし、M2Mを導入する企業も増えています。ただ海外と比較すると、情報収集に時間をかけられて、具体的なプロジェクトが動いていかない、戦略立案までいっていない会社が多いという印象があります。利用の広がりという点ではやや出遅れているのではないでしょうか。
これから日本の企業が海外に出ていく、逆に日本に入ってくる外国企業と競争していくためには、大手・中小を問わずM2Mを積極的に活用していくことが必須になってきます。その意味では日本市場は非常に大きな可能性を持っていると思います。
――日本ではどのような形でM2Mのビジネスに取り組んでいるのですか。
ハロネン ボーダフォンはM2Mのアジア・パシフィック地域の本社を日本に置いていて、営業・技術サポートを含めて約10名のスタッフが働いています。
アジア・パシフィックには日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国に拠点がありますが、これらを合わせた人員が約30名ですから日本には特に力を入れているといってよいでしょう。
ボーダフォンは日本では自社のネットワークを展開していませんから、主なターゲットはグローバルレベルでM2Mを展開することを目指す日本企業になります。
――6月にドコモとのM2M分野での事業提携の拡大を発表されました。
ハロネン ドコモとはネットワークの接続や法人営業ではすでに協力関係にあるのですが、今回の発表はこれをM2Mの営業活動にまで広げようというものです。具体的にどのような形で協力していけるかを現在検討しているところです。
より多くのお客様が我々のネットワークを活用して効率的にグローバルなM2Mシステムを構築できるようお手伝いをしていきたいと考えています。
――日本でも多くの企業がM2Mのソリューションを展開しています。どのような点で差別化を図っていくのでしょう。
ハロネン 我々の最大の強みは、冒頭で申し上げたM2Mのグローバルネットワークだと思います。多くの国にまたがってM2Mのネットワークを構築される場合でも我々のサービスを利用していただければ、現地の通信事業者と個別に契約を結ぶ必要がありませんし、通信料金も一括してお支払いただけます。グローバルSIMの管理もWeb上で一括して行うことが可能です。
日本での私どもの強みとして、国内にいるスタッフが日本語でお客様の対応を行えることが挙げられると思います。障害が発生した場合も国内技術スタッフが、ハンガリー(ブタペスト)のネットワークセンターと連携して対応にあたります。
もう1つ、ボーダフォンのM2Mサービスの強みといえるのが、通信回線だけでなく、通信ターミナル、アプリケーションまで含めてワンストップで提供できることです。
回線についてはモバイルだけでなく固定回線も提供しています。それぞれの業種・業態で使われるM2Mのソリューションを導入する取り組みに力を入れています。
――ボーダフォンブランドのM2M用通信ターミナルも発売されました。
ハロネン 当社ではM2M分野で実績のあるパートナーの通信ターミナル製品も扱っているのですが、2013年2月にモバイルルーター「MachineLink 3G」(図表5)の提供を開始し、端末を含めてM2Mソリューションのすべてを自社製品でまかなうことも可能になりました。この製品は日本を含めた約60カ国にて認証証明を取得しています。
既存の製品に比べてやや安価であることや幅広いカスタマイズが可能であることなど、使い勝手の良さに特徴があります。屋外で使用される重機に取り付けるといったハードな利用ではなく、屋内や自販機やデジタルサイネージへの内蔵などの用途を想定しており、我々はこれを「ライトインダストリ」と表現しています。最近ではゲーム機やATMなどで使われるケースもでてきました。
図表5 MachineLink 3G |
我々は、端末からアプリケーションまでのトータルなM2Mソリューションの提供を通じて、多くの日本企業のグローバルM2Mネットワークの構築・運用のお手伝いをさせていただきたいと考えています。
<ボーダフォンのM2Mへの取り組みに関する詳細はこちらまで>
→ http://m2m.vodafone.com/cs/m2m/home/japan