KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、「心地よいICT環境を目指して――KDDIの取り組み」と題した講演を行った。
KDDIの小野寺正社長 |
KDDIが提唱する「アンビエント社会」は、「連帯感の醸成」「場の活性化」「創造活動の支援」といった良い面をもたらすとされる。アンビエント社会を実現するためのモバイルサービスとして、リッチコンテンツやデバイス連携、高度なUIなどが必要であり、「それらを実現するためにはオープンプラットフォームを構築しなければならない」と小野寺社長は語った。
それによると、EZwebのような従来の垂直統合プラットフォームだけでなく、3G/LTE、WiMAX、FTTH、CATVなどをAPIでオープンにし、サービスプロバイダがサービスを提供しやすいプラットフォームを構築することが重要になってくるという。
オープンプラットフォームの具体例として挙げたのが、AndroidをベースにしたSTB(セットトップボックス)だ。携帯電話とアプリケーションを共通化できるようになり連携しやすくなるほか、アプリケーション開発の効率化も期待できる。また、KDDIが推進するFMBCにおいてもSTBをハブとして家庭機器の連携が可能になるなど、大切な役割を果たすと指摘した。
携帯電話のアプリケーションとインターネットテレビやCATVの機能を共有することで、例えば、携帯電話がテレビのセカンドスクリーンやリモコンとなったり、テレビショッピングの決済端末にもなるという。
ところで、モバイルに関してはデータ通信のトラヒック増への対応が通信事業者にとって大きな問題となっている。小野寺社長は対応策として、「使用できる周波数を増やす」「周波数効率の良い無線方式を導入する」「周波数の繰り返し利用を増やすため、セルサイズを小さくする」という3通りの方法を挙げた。
この中では3番目のセルサイズを小さくすることが大切な要素になるが、「東京のビル街などではこれ以上セルサイズを小さくしても効果が期待できず、フェムトセルを活用せざるをえない」との考えを示した。
auユーザーのトラヒック傾向は、音声通話が17~18時の帰宅時間に集中しているのに対し、データ通信は夜間~深夜の利用が多い。これは自宅で使われていることを意味しており、屋内対策としてフェムトセルが有効であるとも述べた。
auのフェムトセルは2GHz帯に帯域を確保していることから屋外基地局の干渉を受けにくく、「Rev.Aの3.1Mbpsがまともに出せる」という。一方、無線LANについては「FTTHの代替となるためには、将来的に帯域幅の問題が出てくるだろう。今後は固定系ブロードバンドを広げルことが課題になる」と見通しを語った。