ワークスタイル変革Day 2014 レポート日本IBM北氏「成功企業の多くは社内SNSを活用している」

“今どき”のユニファイドコミュニケーション(UC)とワークスタイルのあり方とは――。9月4日に都内で開催された「ワークスタイル変革Day 2014」で、日本IBMの北好雄氏はリアルな人脈とソーシャルネットワークの融合にその答えがあると力説した。

ソーシャルネットワークはビジネスでも使えることがわかってきた

こうした現状を踏まえて、現在のワークスタイルを考えると、リアルな“人脈”をベースとしてビジネスを回していくビジネスパーソンの姿が想像できる。だが、企業の期待するビジネススタイルは、それとは違ってきているという。

「米国のブログサイトで、主にIT系のスタートアップやWebに関するニュースを配信する『TechCrunch』の2012年に掲載された記事によると、企業が期待しているのは、社内組織をまたがったソーシャルテクノロジーが価値を持ち、仕事の一部で使えるようになってほしいということ。なぜなら、(大企業などでは)どんなに人脈が豊富な人でも全社員を知っているわけではなく、どうしても限定された世界でのネットワークになってしまう。企業としては、それではもったいないと考えているのだ」

また、北氏はマサチューセッツ工科大学スローン・マネジメント・スクールを母体とするメディア、MIT Sloan Management Reviewのレポートを紹介。それによると、「ソーシャルビジネスはあなたの組織、会社にとって重要と考えるか」との質問に対し、業種を問わずほとんどの人が重要だと答えているという。

さらに、「ソーシャルビジネスは会社の業績に良い影響を与えると思うか」という質問に対しても、64%の人が「そう思う」と回答している。

「ソーシャルビジネスやソーシャルネットワーク、ソーシャルテクノロジーなど言い方はいろいろあるが、それらは主にプライベートで使われてきた。だが近年、ソーシャルネットワークがビジネスにも使えることがわかり、(米国では)企業内でも活用しようというのが大きな流れになっている」

社内SNSの活用でパートタイマーの離職率を下げて売上を伸ばす

そして、北氏によれば、ソーシャルネットワークをベースにした“今どきのワークスタイル”で、うまく成長に結び付けている企業が続々と出てきている。成功している企業の多くは社内SNSを構築しているという。

「従来だと社員任せのネットワークで仕事していたものを、企業が社内SNSを用意して全社員がアクセスあるいは参加できるようにしているのが共通した特徴だ」

ソーシャルネットワークの構成要素はマイクロブログやWikiなどいろいろあるが、うまくいっている企業ではそれらを1つずつ集めて自社にフィットするように作り込んでいるわけではない。

「IBMでいうと『IBM Connections』というパッケージソフトに当たるが、ワンパッケージの製品を利用しているケースがほとんどだ」。完全に自社にフィットするわけではないが、ビジネス上で必要とされる機能を網羅しているため、こうしたものを使いこなしているのだという。

IBM Connections
「IBM Connections」はソーシャルネットワークの構成要素をワンパッケージにした製品

IBM Connectionsの導入事例として北氏は、ドイツに本社を置く欧州の大手靴流通チェーン「Hamm Reno Group」のケースを紹介した。

同社は単に靴の販売だけを行うのではなく、ファッションを提案する形で靴を販売している。欧州全土からブランドをチョイスし、それを欧州全土で販売する。店舗数は600を数え、従業員は3000人を超える。

Hamm Reno Groupは「IBM Connections」の導入で、パートタイマーの離職率を下げることに成功した
Hamm Reno Groupは「IBM Connections」の導入で、パートタイマーの離職率を下げることに成功した

Hamm Reno Groupの悩みは、店舗の主力スタッフであるパートタイマーの離職率が高いこと。その原因は靴に似合うファッションを提案する必要があり、属人的なノウハウや知識が多分に必要とされるからだ。

「つまり、売り方をよく知っているパートタイマーとそうでないパートタイマーに二極化し、売り方をよく知らない人は仕事ができない人と見なされてどんどん辞めていく。そのため、人の入れ替えが激しくなっていた」

そこで同社はIBM Connectionsを導入。Twitterのように気軽につぶやいたり、Facebookのように「いいね」を押したりできる環境を整えた。これにより、パートタイマー間のオープンなコミュニケーションが活性化され、インタラクティブなやり取りが発生しただけでなく、自社で選んだブランドが顧客にどう評価されているのかが本社にも伝わるようになったという。

また、本社の担当者が1店舗ずつ回って情報を届けるのが難しいのに対し、社内SNSでは情報を流せばすべてのパートタイマーに平等に情報を提供できる。例えば特定のブランドに関する知識が豊富なパートタイマーの発信をフォローすれば、フォローしたパートタイマーはそのブランドに関する新しい情報をどんどん入手することが可能だ。

従来はできなかったきめ細かな製品情報やブランド情報の提供だけでなく、他店の販売状況や他社の販売状況のフィードバックも手に入るようになったという。

IBM Connectionsの導入効果
IBM Connectionsの導入効果。きめ細かな製品情報やブランド情報の提供だけでなく、他店の販売状況や他社の販売状況のフィードバックも手に入るようになった

社内SNSを整備したHamm Reno Groupが次のステップと考えているのがUCの導入。IBMでは「IBM Sametime」というソリューションがこれに当たり、SNSに加えてVoIPやビデオ、Web会議などの活用を検討しているという。

「この事例からもわかるように、これからのワークスタイルを考えるとき、テクノロジーはコンシューマーの間で良く利用されているものを第一候補に考えるとうまくいく。実際にそうした流れが2012年ぐらいから米国を中心に大きな流れになってきた。日本IBMは企業向けのSNSを扱うようになって5~6年経っており、全世界で導入事例やノウハウをため込んでいる。企業のビジネスの役に立つことができるはずだ」と北氏は話し、講演を締めくくった。

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