「法人向けサービスの方向感はクラウドで統一しています」と眞藤氏が言う通り、ドコモではクラウドサービスのラインナップを一段と強化しているところだ。
Google AppsやOffice 365といったグローバルサービスに加えて、昨年9月には独自サービス「ビジネスプラス」の提供を開始した。グループウェアや交通費精算、端末管理などスマートデバイスの業務利用に役立つアプリ14種類を用意。この中から最大3つまでを月額525円(税込)で利用できる(図表3)。
図表3 「ビジネスプラス」のラインナップ |
過去にも、ドコモではいくつかのクラウドサービスを自社ブランドで提供してきたが、必ずしもユーザーに受け入れられているとは言い難かった。
「今までは個別にサービスを作り、磨き上げるという方針だったが、押し付けになっていたのではないか」との反省に立ち、「専門の料理ではなく、もっと気楽に利用できるフードコートを目指した」と松木氏は説明する。あえてドコモの名称を付けずに、パートナー企業の名称で提供していることも、「自前主義」から抜け出そうという姿勢の現れといえるだろう。
ビジネスプラスは、中小企業がスマートデバイスを導入する際のフック商材という位置づけであり、「ビジネススマートフォン F-04F」とセットにして業務変革を提案していきたい考えだ。
さらに現状は、Google AppsやOffice 365の活用を補完する役割もビジネスプラスは果たしている。一例だが、Google Appsの電話帳は部門別や役職別に分類できないことから、代わりにビジネスプラスのネットワーク電話帳「ProgOffice」(NTTソフトウェア)を活用する企業が増えているという。
月額525円という料金設定は、クラウドサービス導入のハードルを下げる効果が期待できる。その反面、ドコモや提供企業にとっては利益率の低いビジネスであることは否めない。「あまり利益にならないが、お客様の利便性に徹底的にこだわった」(松木氏)というスタンスだ。
なかには、優れたアプリケーションでありながら世間に認知されていないケースもあり、ビジネスプラスを通じてドコモがプロモーションの役割を担うなど、サービス提供企業との間でWin-Winの関係を目指している。