世界中の人々や企業を結んでいる広域ネットワーク。通信事業者が構築・運用・提供するこの広域ネットワークにおいても、ネットワーク仮想化の取り組みが進んでいる。
国内で、これをリードするのが総務省の委託研究として立ち上がった「O3プロジェクト」だ。NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社による共同研究プロジェクトであるが、2014年3月14日、O3プロジェクトはイベント「O3プロジェクトシンポジウム2014」を都内で開催した。
広域ネットワークのSDN化は、どんなメリットをもたらすのだろうか。NEC 情報・ナレッジ研究所長代理の岩田淳氏の講演から、その目的や意義、これまでの成果などを2回にわたって紹介する。
キーワードは「ユーザー指向型」
O3プロジェクトは、「ユーザー指向型」をキーワードに研究開発を行っているのが1つの特徴だという。では、ユーザー視点に立った場合、通信事業者の提供する広域ネットワークは現状、どのような課題を抱えているのだろうか。岩田氏はまず、広域ネットワークが変革を求められている背景について解説した。
広域ネットワークのSDN化が求められている背景 |
背景の1つは、サービスの変化(LifeCycleの短期化)だ。「特にクラウドサービス。どういうサービスが成功するか失敗するかは誰にも分からないため、いかに早くサービスを始め、うまくいったものは早く広げ、そうでないものは早く終了する必要がある」
2つめは、利用形態の変化だ。「ビジネスのグローバル化により、海外拠点を早く立ち上げたいというニーズが拡大している。また、業界内、あるいは異業種とのコラボレーションの必要性も高まっている」
ところが、現在の広域ネットワークは、こうしたユーザー側のニーズの変化に付いていけていない。「例えば、新たにWAN回線を構築しようとすると、2カ月とか待つ必要があるというのが現状だ」
そこでO3プロジェクトでは、SDNを広域ネットワークに適用することで、「欲しいぶんだけ、すぐに使えるネットワークの実現」を目指している。