NTTが「ICTカー」開発 大規模災害時の通信手段の確保へ

NTTは2014年1月28日、東北大学、富士通、NTTコミュニケーションズと推進している研究開発プロジェクトにおいて、大規模な災害時に情報通信機能の即時回復を可能とする「ICTカー(車載型小型ICTユニット)」を開発したと発表した。

ICTカーは、サーバやネットワーク機器、無線機器を可搬モジュール化して搭載し、ルーフにはアンテナ類設置機構を装備している。ガソリン発電機、リチウムイオンバッテリ電源ユニットをそなえているため、外部からの電源供給なしでも5日間の稼働を可能とする。

ICTカー

開発の背景には、東日本大震災の際に起きた「通信機能の低下」がある。震災によって通信設備が甚大な被害を受けたことに加え、被災者の安否確認や状況把握等を目的とした通信需要が爆発的に発生したことで、十分な情報通信サービスを提供できなかったのだ。研究開発プロジェクトでは、こうした経験を踏まえて、短時間に被災地に投入でき、柔軟かつ簡易にICTサービスを提供できる「移動式ICTユニット」の研究開発を行っており、そのひとつとしてICTカーが開発されたのだ。ICTカーを被災地に搬送設置し、Wi-Fiエリアを構築することで、被災者が所有するスマートフォンの通信機能を回復し、被災地内での通話を確保することを目的とする。

提供機能は(1)通信機能の即時回復、(2)被災者データ収集システム、(3)データセンター機能。

(1)通信機能の即時回復は、小型交換機(IP-PBX)と、複数の自立型Wi-Fiアクセスポイントの搭載によるもの。Wi-Fiアクセスポイントは、見通しのよい環境であれば半径500メートル程度のWi-Fiエリアを構築できる。契約している通信キャリアに関係なく利用できるのが特長だ。利用者は、スマートフォンからWi-Fi接続して、ソフトフォンと電話番号登録用の専用アプリをダウンロードするだけでよい。小型交換機の内線端末扱いとなり、任意の携帯電話や固定電話番号を利用してWi-Fiエリア内にいる相手との通話ができるようになる。また、光回線や衛星回線を利用してWANに接続することで、Wi-Fiエリア外にいる相手との通話も可能だ。

Wi-Fiエリア外からの着信は、交換機を介して個々の電話番号につなぐ仕組み

(2)被災者データ収集システムは、タブレット端末のカメラ機能を利用して撮影した顔写真と、運転免許証などの個人情報を紐づけてデータベース化する。被災者管理や安否情報作成に役立てられるほか、健康状態アンケートなどと連携させることで医療チームの派遣や物資配給計画などにも活用できる。

最後に、(3)データセンター機能。被災地の地方自治体や病院などの複数の組織が運用するアプリケーションをICTカーが提供する仮想サーバに移行することで、個々のセキュリティを維持しながら組織ごとの簡易運用を可能とする。

大規模災害では通信インフラだけでなく、交通インフラが破壊される可能性もあるが、“車”というかたちにはこだわっておらず、陸路が破壊された場合は、「機能を空輸することも考えられる」とNTT先端技術総合研究所企画部情報戦略担当の森茂実氏。今後は、東南海地震を想定して災害対策に取り組む高知県南国市、黒潮町と協力し、2月下旬に実証実験を実施する予定だ。

また、今回はICTカーの即時通信回復機能を切り出して小型ユニット化し、可搬性を高めた「アタッシュケース型ICT-BOX」も開発した。アタッシュケースには、交換機能を有するPC、バッテリー、無線LANアクセスポイント、広域網接続用アダプタ、貸出用(共用)のスマートフォンが搭載されている。防災無線ソリューションとしての提供を考えており、既に自治体から引き合いがきているという。
ICTカー、アタッシュケース型ICT-BOXの実用化は、今後1~2年を目標とした。

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