NAS市場で存在感増す台湾ベンダーモバイル時代のNAS(Network Attached Storage)の選び方

スマートデバイスが普及するなか、ファイルサーバーアプライアンスであるNASの需要が高まっている。近年国内市場に続々と参入し、存在感を増している台湾ベンダーにフォーカスを当て、製品選択のポイントと活用形態を紹介する。

RAIDの管理もサポート

データ保護の信頼性向上、管理者の負荷軽減に貢献する機能も用意されている。データ保護で外せないのがRAIDだ。冗長性を持たせるテクノロジーで、高速性を重視するRAID0や耐障害性の高いRAID1など、目的別に異なるRAIDモード(図表3)があり、複数のRAIDモードを組み合わせることもできる。

図表3 RAIDモード(抜粋、HDD4台構成の場合)[クリックで拡大]
RAIDモード(抜粋、HDD4台構成の場合)

管理者にとってRAID設定はHDD交換の際などに注意を払う必要があり手間となるが、QNAPはこれにグローバルホットスペア機能で対応している。複数のRAIDボリュームをスペアドライブとして共有し、故障時にグローバルホットスペアドライブが自動的に故障したドライブに置き換わってデータ損失を防ぐ機能だ。RAIDのほか、システムエラーや堅牢性にも注力している。

Synologyは中小企業向けのモデルにもフェイルオーバー機能を搭載しており、NAS2台でクラスタを構築し、プライマリサーバーがシステムエラーを起こした際にセカンダリサーバーに自動で切り替わる。

Thecusは、信頼性と堅牢性確保のため開発から製造に至るまですべての工程を、本社を置く台湾で行っている。「2004年設立当初に販売したモデルが今も故障なく動いている」とThecus販売代理店のUAC情報機器部技術グループの山本智久氏は話す。また、DOM(Disk On Module)を二重化したDUAL DOM設計により、システムエラー時にもうひとつのDOMが自動的にシステム復旧するため、業務システムを止めない運用が可能だ。

仮想化にも対応

導入する際に、将来的なデータ容量の増加予測とコストパフォーマンスは切っても切り離せないところだ。ThecusはHDD搭載数が4つ以上を備えるNASについてはiSCSI(※2)に標準対応しており、仮想化による大幅なボリューム拡張を差別化ポイントとしている。

※2 iSCSI
記憶装置とコンピュータの通信に使うSCSIコマンドを、IPネットワーク経由で送受信するための規格

16ベイの「N16000PRO」を例にとると、デイジーチェーン(※3)接続と10GbE(ギガビットイーサネット)接続を組み合わせて最大2.56PBのボリューム拡張を可能とする。これにより、N16000PROに1 6ベイのDAS(Direct-Attached Storage)「D16000」を4つまで接続できる。さらに10GbEを介して同一構成のデイジーチェーン接続を8つ繋げることで2.56PBのボリュームを得ることができる(図表4)。

※3 デイジーチェーン
複数の機器を数珠繋ぎにつないでいく接続方法。デイジーチェーンで配線する機器は同形状のコネクタが2つついており、バケツリレー式にデータ転送を行う

図表4 Thecusの大容量ストレージ拡大のためのダイナミックiSCSIボリューム拡大とデイジーチェーン接続[クリックで拡大]
ThecusのダイナミックiSCSIボリューム拡大とデイジーチェーン接続

この膨大なボリュームをマスターユニットとなるN16000PROで管理する。データセンターなど膨大なデータを扱う場所向きのソリューションでは、こうした仮想化技術を使った機能強化は必須となっている。

広がるNASの活用シーン

NASの活用法にはこういったものもある。複数拠点を持つ企業に対するバックアップ法だ。例えば、拠点が4つあるとしよう。拠点ごとにNASを設置し、拠点1で発生したデータを手元のNASに保存するほか、バックアップとして拠点2~4にも送る。拠点2で発生したデータは1、3、4に…というように相互バックアップをとるのだ。さらにクラウドストレージサービスでバックアップして二重三重のバックアップをすれば、いくつかの拠点がシステムダウンしてもデータは保護される。

また、企業内で次のような活用もできる。本社管理部門にメインのNASを設置し、営業など各部門にはローエンドモデルを置く。部門ごとにNASを運用し、バックアップをメインのNASに任せる形態だ。部門ごとの重要データを他部門に漏れるリスクを回避できる上、NAS1台にかかる負荷の分散にもなりバックアップに要する時間も削減できる。

NASの活用シーンは幅広い。これからベンダーと開発者双方のアプリケーション開発が進めば、また新たな用途も生まれる。モバイルデバイスとの更なる連携や、ICT化が進んでいない病院など特定業種向けアプリケーションの開発にも期待がかかる。

月刊テレコミュニケーション2013年11月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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