Wi-Fiの置き換え進む製造・物流 搬送車から工具まで大量接続
製造や物流の現場では、機器やロボットが縦横に動き回り、通信の安定性が生産性を左右する。
こうした現場で、Wi-Fiからローカル5Gへの移行が進んでいる。
屋内環境において、Wi-Fiはアクセスポイント1台あたりのカバー範囲が直径50m程度にとどまるが、ローカル5Gでは約200m。400m四方の敷地を想定した場合、Wi-Fiでは64台のアクセスポイントが必要だが、ローカル5Gなら4台の基地局で済む。不感地帯が生じにくいうえ、管理コストも抑えられる。
基地局間のハンドオーバーがスムーズな点も大きな強みだ。「AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、工程間をつなぐ際に多く利用されます」とNTT東日本の和田佳氏は話す。製品は入庫、加工、組立、検査、出庫といった工程を経ていくが、建屋をまたぐケースも多い。ローカル5Gなら、移動中の端末が基地局を切り替えても通信が途切れず、AGVやAMRがシームレスに走行できる(図表2)。これは大きなポイントとなっている。
図表2 ローカル5Gによる製造・物流のスマート化

スマート工場では、こうした搬送機器に加え、産業用ロボットや検査機器、電子指示書など、多様な無線端末が稼働している。ローカル5Gは、数百台から数千台の規模の同時接続に対応し、高密度な環境でも安定した通信品質を確保できる。
NTT東日本では、ローカル5Gに直接接続できるスマート工具の開発にも取り組んでいる。電動レンチなどの作業データをリアルタイムで取得・分析することで、作業品質のばらつきを抑え、生産工程のさらなる最適化を目指している。
建設業の人手不足を救う IOWN活用し“超遠隔操作”も
建設業はあらゆる産業の中でもとりわけ人手不足が深刻だ。ローカル5Gは、その解決策として大きな注目を集めている。
竹中工務店では、マネージド・ローカル5Gサービス「ギガらく5Gセレクト」をドローンによる安全点検に採用。人が1日数回行っていた点検作業を自動化し、途切れのない高精細映像伝送によって安全かつ効率的な遠隔点検実現を目指している。
高層建築に欠かせないタワークレーンの作業支援でも効果的だ。タワークレーンは高さ300mにも達し、タワークレーンオペレーターからフック先端の視界を確保することが難しい。これまで、作業はオペレーターと地上作業員間で音声による合図で進めていた。それが、ローカル5Gを活用することで、高精細なカメラ映像を常時伝送し、オペレーターは操作位置からフックの動きや周囲の状況を正確に把握できるようになる。現在、作業効率と安全性の向上のため実証を進めている。
そして、西松建設とはIOWNとローカル5Gを組み合わせた建設重機の超遠隔操縦に取り組んでいる。熟練オペレーターの高齢化により、遠隔地の現場に出向くことが難しいという課題が顕在化している。そのため、両社は西松建設の栃木県の実験施設「N-フィールド」と、東京・調布のNTT中央研修センタ内に設置したコクピット間を結ぶ実証を進めている(図表3)。
図表3 ローカル5Gによる重機の遠隔操縦環境(西松建設「N-フィールド」)

IOWN APN(All Photonics Network)で拠点間を超低遅延で接続し、現場ではローカル5Gが建設重機と制御端末を結ぶ構成だ。この構成で、200km離れたトンネル現場をリアルタイムに操作する環境を実現した。
「建設重機操作は、eスポーツとの親和性も高いのではないかと考えており、将来的にはeスポーツプレイヤーが建設重機オペレーターとして活躍するなど、新しい人材活用につながる可能性もあります」とNTT東日本の西原英臣氏は語る。









