ファーウェイが2025年10月から、AIデータセンターでの利用を想定した世界初のOXC(光クロスコネクト)スイッチ「OptiXtrans DC808」の日本での販売を開始した。

世界初のAIデータセンター向け光スイッチ「OptiXtrans DC808」
OXCスイッチとは、光信号を電気信号に変換することなく直接スイッチングする装置だ。入力された光信号を反射させて、出力側の光ファイバーへつなぐのが基本的な仕組みである。この“つなぎ替え”に、平面上に配置された微細なミラー群の傾きを電気的に制御できるMEMSミラーを用いる(図表1)。
図表1 全光スイッチングの基本技術

ファーウェイ・ジャパンの杜豊寧氏は「中国ではすでにAI関連企業3社がデータセンターに導入しています」と明かす。

ファーウェイ・ジャパン ICTマーケティング&ソリューションセールス本部 光技術ソリューションセールス部
ソリューションセールスマネージャー 杜豊寧氏
GPU間接続のコアスイッチを光スイッチに置き換え
19インチラック6U分に収容できるDC808の筐体の前面には、入出力それぞれ256個のLCポートが装備されており、「どのポートで入った信号をどのポートから出力するかをソフトウェアで制御できる」(杜氏)。スイッチングできるのは、光通信に広く用いられている1310nm帯(Oバンド)の光信号だ。自社開発のMEMSミラーにより、30ミリ秒未満という短時間での切り替えを実現している。
DC808の活用法として想定されているのが、AI/ML開発基盤であるGPUクラスターのインターコネクトだ。このコアスイッチをOXCに置き換える。
AIデータセンターでは、多くのGPUサーバーを広帯域ネットワークで接続したGPUクラスターを構成する。図表2のように、GPUサーバーをいくつかのグループに分けてLeaf-Spineネットワークに収容。各グループをコアスイッチで束ねる3階層のネットワーク構成が採られることが多い。データ処理のニーズに合わせてコアスイッチでネットワークの構成を柔軟に変更しリソースを有効活用しているのだ。
図表2 DC-OXCによる光電ハイブリッドAIクラスターの構成例

ファーウェイの提案は、このコアスイッチをDC808で置き換え、ネットワーク構成の変更を光通信レベルで行うというものだ。
これにより、複数のメリットが得られる。まず、コアスイッチ部分において、光電変換がなくなることによる省電力化だ。ネットワーク全体で約20%も削減できるという。機器構成のシンプル化によって信頼性も向上する。光電変換による遅延がなくなる点も大きい。最後に、400G、800G、1.6Tbpsと光伝送技術が高速化しても、機材を変更せずに対応できることも見逃せない。通常なら、伝送規格が変わるたびにトランシーバーの入れ替えが発生するが、OXCにはそもそもトランシーバーが不要。大きなコスト削減につながる。
もう1つ、DC808の有力な活用分野として期待されているのが、光通信機器の試験だ。こうした試験環境の構築はケーブルの差し替えやパッチ盤での切り替えで行われることが多いが、DC808を活用すれば、多数の機器を短時間で切り替えられる。
新たな活用シーンも現れてきそうだ。ファーウェイ・ジャパンでDC808の市場開拓に取り組んでいる池田俊樹氏は「放送業界ではMoIP(Media over IP)や独自方式で映像信号が光伝送されることが多くなっています。通信方式を問わず、切り替え時間が短いDC808はこの分野でも利用されるのではないか」と期待を寄せる。











