KDDIは従来からワークスタイルの変革を進めてきたが、それを加速させたのは2011年3月11日に起きた東日本大震災だった。
当時、音声系のシステムエンジニアとして働いていた堀氏は、上司に指示により、地震発生の2日後に仙台へ赴き、顧客の通信環境の復旧に力を尽くすことになった。そこで感じたのが、コミュニケーションの重要さだ。
「本社に待機する関係者にテレビ会議を利用して状況を伝えたかったが、仙台支社にはテレビ会議システムが2つしかなく、緊急を要する他のトラブル対応のために使われ続けていた。あの時ほど、時間や場所にとらわれない会議環境があればいいと思ったことはない」と堀氏は振り返る。
KDDI ソリューション推進本部 ソリューション企画部 ユニファイドグループ グループリーダ 堀純二氏 |
全社員の意識の変化が、ワークスタイル変革を促進させた
当時、KDDI社員のメインのコミュニケーション手段は携帯電話とメール。堀氏の携帯電話には本社から電話とメールが殺到し、バッテリーが半日も持たないような状況だったという。「電話とメールだけでは限界を感じた」と堀氏はこぼす。
災害時は、現場や本社が大混乱のなかでも個人の行動に“スピード”が求められる。個人が“意思決定”を“その場”で行い、少しでも早く行動できる環境の必要性を痛感したという。
意思決定を行うには情報収集が欠かせない。このスピードをいかに上げられるかが重要で、「そのためには時間や場所に依存しないモビリティが高い環境と、相手の状況に応じた適切な情報伝達の2つが必要だ」と堀氏は主張する。
そして、これらを実現するためには、電話とメールをコミュニケーション手段のツールとする従来のワークスタイルを見直す必要があったのだ。
KDDIにおけるワークスタイル変革の変遷 |
前述の通り、KDDIは大震災前からワークスタイルの変革に取り組んでいた。ただ、その目的は業務効率の向上やパンデミック対策などであり、利用するITツールや利用シーンは限られていた。
だが、大震災の反省を経て、2011年4月からは時間や場所にとらわれずに働ける環境の構築を急ピッチで進められていった。「全社員の意識の変化が、ワークスタイル変革を促進させた」と堀氏は話す。