「NFVの本格普及は2016年から」――米HP 通信・メディアソリューション部門CTOに聞く

NFV(Network Function Virtualization)への注目が高まるなか、ヒューレット・パッカード(HP)もNFVに本腰を入れている。HPの通信事業者向けソリューション事業戦略をジェフ・エドルンドCTOに聞いた。

――HPの通信キャリア向け事業における強みと、所属されているCMS(Communications and Media Solutions)の役割について説明してください。

エドルンド HPは通信分野でも強い製品やサービスを持っています。例えば携帯電話の加入者情報を管理するHSS/HLRやメディエーション(呼情報収集)サーバーは世界でトップのシェアを持っています。OSS/BSS(運用支援/ビジネス支援システム)も我々の強い分野で、アシュアランス(サービスの品質保証)や不正利用検知などで他社にないノウハウがあります。

私が所属しているCMSは、通信事業者向けのソフトウェア、ソリューションの開発と販売を行っており、通信事業者向けビジネスでは中心的な役割を担っています。従業員は世界で約4000名ほどです。

――HP CMSでは現在、どのような分野に力を入れているのですか。

エドルンド 我々は、1年ほどかけて3つのテーマに取り組んでいこうとしています。

1つは、お客様がサービスを提供される際のコストを削減すること。2つ目が、通信キャリアが持っている情報を活用して新たな収益を生み出すこと。最後がこの種のビジネスを展開する上で問題となる個人情報保護などで各国の法律に対するコンプライアンスを保証することです。

製品分野では、カスタマーエクスペリエンスマネジメント、ビッグデータ、クラウド、M2Mの4つに重点を置いています。さらに今年後半からは、(1)Wi-Fiオフロード、(2)設備の構築・運用をHPが通信キャリアに代わって行う「マネージドサービス」、(3)新しいネットワークアーキテクチャーであるNFV(Network Function Virtualization)およびSDN(Software-Defined Networking)の3分野にも力を入れていこうとしています。このNFV/SDNは、日本のお客様にも強く訴求しています。

NFVとSDNは補完関係

――NFVは今年に入って急に話題に上るようになった新しい技術です。どのようなものなのでしょうか。

エドルンド 通信事業者のコアネットワークは、ポリシー管理や課金などさまざまなコンポーネント(機能モジュール)を実装したアプライアンスを組み合わせる形で構築されています。NFVは、ハードウェアとアプリケーションの間に抽象層を設けて両者を切り離し、COTSと呼ばれる汎用サーバー上でコンポーネントの機能を実現しようというものです。

発想はクラウドサービスと同じですが、コアネットワークには極めて高い信頼性と高い処理能力が求められます。NFVはそれをクリアする必要があります。

似た技術にSDNがありますが、これはスイッチングのためのハードウェアを仮想化するものです。SDNとNFVとは補完関係にあり、我々はこの2つを組み合わせることで、柔軟で効率的な運用ができる新時代の通信ネットワークを提案していこうと考えています。

月刊テレコミュニケーション2013年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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