仮想デスクトップは、クライアント端末からの情報漏えい防止やIT部門の運用負荷低減を目的として、以前から企業が導入してきた。最近はそれに加えて、タブレット端末などのスマートデバイスを活用してワークスタイル改革を推し進めようと仮想デスクトップの導入に乗り出す企業が増加。仮想デスクトップ関連市場の規模は一気に拡大しようとしている。
年間20%超で成長する仮想デスクトップ市場
IDC Japanによれば、2012年の国内クライアント仮想化ソリューション市場規模は3526億円、前年比40.7%増と大きく成長した。2013年も高成長を維持し、国内クライアント仮想化ソリューション市場の規模を同社は4751億円と予測したうえで、2012年~2017年にかけて年間20.9%で成長を続けていくと見ている。
仮想デスクトップの基本的な仕組みは、デスクトップ利用環境を物理的なクライアントと分離すること。これを実現するための方式はいくつかあり、現在主流となっているのが、VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラ)と呼ばれるものだ。
クライアントOSやアプリケーション、データはサーバーに格納し、物理的なクライアント端末にはこれらを保有しない。ユーザーは、VPNなどのネットワークを介して、サーバーに格納された自分の仮想デスクトップ環境にアクセスして遠隔から利用する。サーバー内の仮想化されたクライアントPCから手元の端末へ画面情報を転送して表示し、一方、手元のクライアント端末から入力情報(キーボードやマウス、タッチパネルの操作等)をサーバー内の仮想PCへ送って操作を行う仕組みだ。
セキュリティ強化策として採用
仮想デスクトップのメリットは何か。第1は、セキュリティ対策を強化できることだ。
クライアント側にデータを保存しないので、社員が端末を紛失した際などの情報漏えいリスクを低減できる。オフィス内のPCでも同じだ。サーバー側に手厚いセキュリティ対策を施しておけば、個々のクライアントから情報が漏えいするリスクを低減できる。これが、金融機関など、セキュリティを重視する企業がデスクトップ仮想化に飛びつく最大の理由だ。
メリットの第2は、ITシステムの運用管理コストを低減できること。パッチソフトの配布が効率的に行えることがその典型だ。サーバー内でクライアントを一括管理しているため、社内に散在しているクライアントにパッチソフトを配布する場合に比べて、作業が効率的に実行できる。
第3のメリットは、自宅や外出先でも、普段利用しているアプリケーションを使用して仕事が行えることだ。このような使い方は従来、災害時などの事業継続対策の一環として位置づけられてきたが、タブレット端末の普及を契機にワークスタイルを変革するツールとして仮想デスクトップの注目度が高まっている。
こうしたメリットに加えて、2014年4月に予定されるWindows XPのサポート切れも、仮想デスクトップへのニーズが高まる大きな要因となっている。
XPからWindows7や8にバージョンアップすることは、企業にとって大きなコストとなる。XP用に業務アプリケーションを作り込んでいた企業は、新OSに対応させるため、その改変コストが加わる。そこで、既存のXPアプリケーションを仮想化された環境で使い続ける道を選択すれば、多大な出費を抑制できる。
クラウドサービスとして仮想デスクトップを提供しているソフトバンクテレコム・営業開発本部クラウドサービス開発統括部統括部長の皆川真人氏は「商談の山は、2014年4月に予定されているWindows XPのサポート切れと見ている。今年は一気に仮想デスクトップ事業を伸ばす」と意気込みを見せる。