オフィスのリニューアルも契機に
オフィス移転や企業合併に伴うオフィスのリニューアルも、UCの導入契機となる。この場合、ワークスタイル全般を大きく変えるための重要な要素として、UCが捉えられることになろう。
日立製作所は自社の実践例をベースに、ワークスタイル改革ソリューションを提供。その中でUCの提案を進めてきている。
日立は過去数年間にわたり、グループ全域約9000名を対象としたワークスタイル改革を進めてきた。その過程で、さまざまな自社のICTツールを利活用するとともに、新たなコミュニケーションツールも開発してきた。情報・通信システム社の経営戦略室事業戦略本部融合事業統括部Exアプローチ推進プロジェクトの北川央樹担当部長は、「日立のワークスタイル改革の取り組みは、ICTツールの運用ノウハウを蓄積し、お客様への提供時に役立てることも根本の目的の1つだった」と語る。
巨大な企業体であるだけに、実に多様な業種・業態でのワークスタイル改革のノウハウを持つのが同社の強みだ。
図表のように、業種・業態ごとにワークスタイルの特性を分類。特に営業・フロントSE部門と、知識創造を重視するデザイン部門等については、陥りがちな課題とそれを解決するソリューションを組み合わせたワークスタイル改革モデルを作り、提案を進めている。ユーザー企業の課題を抽出するコンサルティングサービスからソリューションの提供、導入支援、導入後の効果測定、アウトソーシングまでワンストップで提供。社内実践のノウハウも、そこで大いに活かされているという。
図表 日立グループのワークスタイル改革事例 |
また、国内ではまだ類例の少ない、大規模なワークスタイル改変の投資対効果を実際に示せるのも日立の強みだ。
コミュニケーション効率の向上に関しては定性的な効果しか示すことができないが、オフィスのフリーアドレス化によりスペースは3分の2に縮小、職制改変時の経費は10分の1まで削減した。オフィススペースの有効活用により、多額の固定費を削減した実証例は、ユーザーにとって魅力が大きいはずだ。
日立の「統合コミュニケーション」の中核をなすのが「座席ナビ」だ。PCのログオン情報やステータスに基づいてWebブラウザの座席表に在席状況を表示する、フリーアドレスオフィス向けに開発された座席表型のプレゼンス管理システムである。
ネットワーク販売推進センタ・CommuniMax製品事業推進部の小高浩主任技師によれば、「最近は、非フリーアドレス環境のお客様が、プレゼンス機能だけでなくIM機能を評価して導入・検討するケースが増えている」と話す。フリーアドレスを実現するためのツールとして開発された座席ナビだが、IMやスケジュール連動などの機能を備えることで、それ自体がコミュニケーション効率化のツールとして評価されている。
座席ナビは現在、Internet Explorer、Firefoxのほか複数ブラウザへの対応を進めており、小高氏によれば先般「Safariでの動作を確認した。外出先でも、iPhoneからオフィス内の状況がわかるようになる」という。社内外のコミュニケーションが効率化すれば、さらにワークスタイルの幅は広がる。そうした進化がさらにUCの効果を高め、ユーザーにとっての魅力も増していくことになるだろう。
次回は、効果的なUCの活用場所について見ていく。
第1回 ユニファイドコミュニケーションの「7つの入り口」とは?
第3回 「顧客接点」で高い投資対効果を生むユニファイドコミュニケーション