光ファイバーからIoTセンサーへ給電
2つめは、「光ファイバー給電」だ。光ファイバーを通る光を電気に変換して端末を給電する技術である。電力供給が困難なエリアへ通信サービスを展開し、センシング等を行うのに有望な技術として期待されている。NTT研究所では、光ファイバー給電によって端末側に電気を貯め、その電力を使ってIoTセンサーを稼働させたり、センシングデータを無線送信するといった使い方を想定している。
光ファイバー給電による超省電力端末技術
実用化に向けて現在取り組んでいるのが、端末の省電力化だ。低強度の給電光でも動作させられるように、必要な時間のみ起動するスリープ動作によって平均消費電力を低く抑える。無線IoTセンサーやカメラ(静止画)を運用する100mW程度の領域をターゲットに開発を進めているという。
給電光の強度を低くするのは、端末が置かれる場所はメンテナンスが難しい僻地や地下などが想定されており、万一光ファイバーが断線するなどして光信号が漏れ出すと危険だからだ。もし直視した場合、視力低下や失明の危険がある。
光ファイバー給電を実現する装置群
光アクセスシステムを汎用GPUサーバーで稼働
最後に紹介するのは、光アクセスネットワークの中核をなすOLT(Optical Line Terminal:光回線終端装置)を汎用サーバーで動かせるようにする、フルソフトウェア化の取り組みだ。
OLTは通信事業者の局舎に設置されるもので、家庭やオフィス等に置かれるONU(Optical Network Unit)と対になって光アクセスシステムを構成する。現状、OLTもONUも専用ハードウェアが使われている。
これまでもソフトウェア化や仮想化は取り組まれてきたが、制御機能(コントロールプレーン)が主であり、伝送機能も含めた柔軟な新機能の開発や実装ができなかった。伝送機能も含めてソフトウェア化できれば、開発期間の短縮に加えて、産業用や映像伝送用の独自プロトコルに対応するといった用途ごとの要件に対応しやすくなる。アクセスサービスの提供をより効率化することも可能になろう。
NTTアクセスサービスシステム研究所では、従来は専用チップ上に実装されていた伝送機能をソフトウェア化し、GPUサーバーに実装することを目指している。現状では、10G-EPONの伝送機能×4ポートの性能を実現し、専用ハードウェアに匹敵する性能を達成しているという。
光アクセスシステムのフルソフトウェア化の概要
説明員によれば実用化に向けてはコスト面も含めて解決すべき課題がまだ多いが、光アクセスサービスの高度化に大きく貢献できると展望する。ユーザーの要望に応じて機能を切り替えたり、新機能を追加したりといったことが即座にできるようになるほか、家庭向けとビジネス向けの需要が増減するのに応じて、柔軟に機能の配備やリソースの配分が行えるようになる可能性がある。