企業が避けて通れない「地政学リスク」
経済活動がグローバル化した今、どうしても避けて通れないのが「地政学リスク」だ。ロシアとウクライナの軍事衝突や米中対立、台湾有事など、国家間・地域間の政治的・軍事的対立は、世界経済へ多大な悪影響を及ぼす。
地政学リスクが高まる中で狙われやすくなっているのが、国際通信の99%を担う海底ケーブルである。昨年11月には、バルト海周辺で2本の海底ケーブルが切断された。ロシアがEU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)へ圧力をかけるための破壊工作によるものと噂されている。
今年2月には台湾本島と離島を結ぶ海底ケーブルが切られ、付近を運航していた中国の貨物船が拿捕されたとの報道もあった。こうしたリスクに備えるため、海底ケーブルへの攻撃を考慮した軍事演習の実施など、諸外国では国主導の海底ケーブル防護に関する取り組みが加速している(図表1)。
図表1 各国の海軍・沿岸警備機関・民間企業による海底ケーブルの防護活動
日本のグローバル企業にとっても他人事ではない。「海底ケーブルが切断されると、特にルート冗長化が進んでいない国に拠点を構える企業に大きな影響が出る」。こう警鐘を鳴らすのは、三菱総合研究所(MRI) 先進技術・セキュリティ事業本部 デジタル基盤戦略グループ 研究員の小野真之介氏だ。
2022年1月にトンガで発生した海底火山の噴火により、その周辺の海底ケーブルが損傷したが、海底ケーブルが十分に整備されていない同国では、海外との音声・データ通信が途絶してしまった。