韓国のLTEエリアは99%に
――8月から韓国や米国で、CSFBやSVLTEではなくVoLTEが導入された理由はどこにあるのでしょうか。
ホンギスト 韓国の2社のオペレーターは伝搬特性に優れる800MHz帯を使って人口カバー率99%程度のサービスエリアをLTEで構築しているので、VoLTEだけでも十分実用的なサービスが提供できます。先ほど述べたように、リッチなサービスが可能となることもVoLTEを導入する動機になっていると思います。
2013年には、SRVCC(Single Radio Voice Call Continuity)という技術が実用化され、VoLTEの導入のハードルがさらに低くなるでしょう。これはLTEのエリア内では音声通信にVoLTEを利用し、エリアの外に移動した場合も2G/3Gにハンドオーバーして通信を継続できる仕組みです。これにより、LTEのエリアが狭くても実用的なサービスが提供できます。
――現在サービスを行っている3社の次には、どのキャリアがVoLTEを導入すると見ていますか。
ホンギスト ベライゾンやNTTドコモ、独T-モバイルがVoLTEへの投資を積極的に進めていますが、商用化の時期は明確になっていません。
――スマートフォンの音声通信対応は当面はCSFBやSVLTEで事足りるということにはなりませんか。
ホンギスト どういうシステムを選択するかは、現在のネットワークの状況によっても違ってきます。
例えばドコモのように3Gのカバレッジが全国津々浦々にまで広がっているケースではCSFBは非常に有効なソリューションになります。他方、2GのGSMが主力で3Gのカバレッジがあまりないケースでは、CSFBでGSMに切り替わるとデータ通信ができなくなってしまいます。こうした事業者がVoLTEへの導入に積極的に取り組んでいくことになると思います。
もっとも、ドコモは非常に先進的なキャリアですから、LTEのネットワークが広がる前にSRVCCを使ってVoLTEを本格的に導入するのではないでしょうか。日本のような競争の激しい市場だと、他社が導入すると競争上、入れざるを得なくなるという側面もあると思います。
――NSNでは、VoLTEにどのような形で取り組んでいるのですか。
ホンギスト 当社では、通信キャリアがステップを踏んでVoLTEを展開できるようなソリューションを用意していくことを考えています。
具体的には、第1歩としてCSFBを導入して、LTEのカバレッジが広がってきたらSRVCCでVoLTEを入れる。LTEのカバレッジが2G/3Gと同等に広がった時点で、VoLTEに一本化するという流れになります。NSNではすでにCSFBについては商用導入のお手伝いをさせていただいていますし、SRVCCでもルネサスエレクトロニクスと一緒にトライアルを行っています。
我々は、これらのシステムの構築に必要なLTE無線、パケットコア、IMS、アプリケーションサーバーなどをすべて持っています。これらのリソースを活用して、キャリアがスムーズにVoLTEに移行できるよう、お手伝いしていきたいと考えています。