「2025年以降、各産業がこれまで以上に自分たちのビジネスにワイヤレスを取り入れ、DXを進めるフェーズになる。2030年には、ワイヤレスが社会全体の基盤となる『ワイヤレスの社会インフラ化』の時代が来る」。こう述べるのは、三菱総合研究所(MRI) モビリティ・通信事業本部 ICTインフラ戦略グループの伊藤陽介氏だ。
日本企業のDXは、諸外国と比べると遅れているとの指摘もあるが、徐々に進展が見られる。MRIが行ったアンケート調査によると、「積極的にデジタル技術の導入・利用を進めている」と回答した国内企業は、2021年度時点では約17%だったが、2023年度には約23%に増加した(図表1)。
図表1 ワイヤレス通信へのニーズの変化
また、こうした企業に対して追加アンケートを実施したところ、「有線を無線に切り替えたい」「無線をリプレースしたい」「新たに無線を導入したい」と回答した企業は、2021年度は約52%だったが、2023年度には約63%まで上昇した。DX積極層に関しては、約86%の企業がワイヤレスの重要性を感じている。この傾向は、2025年以降も継続するとMRIでは見ている。
IDC Japan Infrastructure&Devices リサーチマネージャーの山下頼行氏も、「パソコンを使わない仕事、つまりブルーカラーが働く現場のDXにIoTなどのワイヤレスが関わっていく」と予測する。同社の市場調査によると、産業分野でのIoT活用も後押しし、2023年の国内IoT市場は約6兆2000億円に到達。2023~2028年のCAGR(年間平均成長率)は約8%で成長し、2028年には約10兆1700億円に達する見込みだ(図表2)。
図表2 国内IoT市場支出額予測