NECはこの策定を受けて09年2月、Parlay Xの標準化を担うOMAにこの「共通API仕様」をベースとするAPI拡張のワーキングアイテムの設立を提案。4月にはこれが承認され「NGSI 1.0」の検討がスタートしている。標準化は2010年3~4月頃に完了する見込みだ。
検討中のNGSI 1.0では、Parlay Xの既存インターフェースのうち「呼制御」「共有データの管理」など7項目の拡張と「パーソナル新機能」として「コンテキスト管理」「サービスの検索」「ID連携」の3つのインターフェースの追加が計画されている。
個人情報をセキュアに外部活用
では、NGSI 1.0を活用することで何が可能になるのだろうか。
NECで次世代ネットワーク市場の活性化に向けたプロモーションを担当するNGNエヴァンジェリストの谷英明氏が、NGSIの注力分野の1つとして挙げるのはパーソナライズドサービスだ。
ユーザーの属性や状況に応じて適切なコンテンツや広告をタイムリーに配信するこの種のサービスは、大きな伸びが期待される分野。NGSIではその鍵となる顧客の状況や契約条件などを外部から活用できるコンテキスト管理などのAPIを追加することで、サードパーティによるパーソナライズドサービスの展開を可能にしている。
もちろんこうした個人情報の場合、プライバシー問題に配慮する必要があるため、通信事業者がサードパーティに提供し難い部分があるが、谷氏は「具体的な個人情報を『実名・仮名変換』で隠蔽して、特定の属性のユーザーに情報配信できる仕組みを設けることで問題をクリアしている」という。
もう1つ、同氏が大きな柱に位置づけるのが「メディア拡張」である。これはインターネットの世界で扱われているような多彩なマルチメディアデータに関わる網機能を提供するためのものだ。
例えば電話の呼び出し時のリングバックトーン代わりに音楽を流すサービスがキャリアから提供されているが、こうしたサービスに使われる網内のメディアサーバーは、音声以外のメディアにも対応できる。NGSIではこのメディアサーバーを扱えるAPIが規定されており、「音楽だけでなく映像を流したり、そのときの状況に応じて不在メッセージなどを流したりするサービスをサードパーティが提供することも可能」(谷氏)だという。
また、NGSIで拡張された呼制御関連のAPIを使えば、PBXで実現されているようなグループ呼び出しなどの機能を、サードパーティが自社のサービスに簡単に組み込むこともできる。
もっとも、谷氏は「『1.0』には我々のやりたかったことが十分に盛り込めていない」としており、次期バージョンで大幅な機能拡張を図る考えだ。大きな方向性としては、NGNがサポートする各種機能の取り込みと、Web 2.0/クラウドとテレコムとの融合が当面の大きなテーマになるという。
他方、OMAではParlay X関連のワーキンググループの再編が検討されており、今後の枠組みや来年以降の規格名称などについてはまだ不透明な部分もあるという。谷氏は「ぜひNGSIの名称で次世代仕様の策定を進めていきたい」と意気込む。
規格策定を受け、NGSI 1.0実装製品の提供が今春以降、順次始まる見込みだ。キャリアのAPI提供コストを大きく引き下げ、サードパーティのシステムの効率化を実現するNGSIが普及すれば、業界全体の網開放コストをミニマムにできる。
通信事業者による網機能の提供の本格化には収益モデルの確立など別の課題も残るが、NGSIの策定がその動きを後押しすることは確かだろう。