“IoT×AI”の最前線へ
こうした自営系IoT無線の利用価値は、AI技術でさらに高まっていく。
SmartHopはエッジAIによるカメラ映像解析に強みを持ち、道路管理に活用されているが、「SmartHop自体の強みはデータの双方向通信」とOKIの矢ヶ部仁之氏は話す。センサーからデータを上位サーバーに送るだけでなく、解析結果をセンサー側にフィードバックすることより、より精度の高い故障予測などが可能になる。矢ヶ部氏は「エッジ側のAIが高性能化している」と続け、末端のセンサーに搭載されたAIと上位のAIを組み合わせ、無線を介して解析結果をいち早く通知する利用が増えていくのではと展望する。
OKI コンポーネントプロダクツ事業部 事業企画部 新事業推進室 エッジデバイスチーム マネージャー 矢ヶ部仁之氏
また、Wi-SUN FANでは、製造設備のモーターに加速度センサーを取り付け、振動パターンをAI分析することで故障を予測する実証に取り組んでいる。「振動はデータ量が多く、他のLPWAでは難しい」と和泉氏。エッジでのデータの間引きと組み合わせ、早期の商用化を目指す。
自営系IoT無線がモニタリング目的で構築するセンサーネットワークは、AIが学習するための教師データ収集の非常に有効な手段になる。諸井氏は「ローコストで効率のよいネットワークを使って、時系列データを常時集めること」がAI活用には必須であると語るが、これは上述したようにZETAの得意分野だ。大量かつ良質のデータを学習することでAIはより賢くなり、異変の察知やシステム制御の性能が向上する。
比較的大きなスループットの「Wi-SUN FANは十分音声を送れる」ことから、和泉氏はコミュニケーションロボットとAIを用いた介護予防への応用を構想する。高齢者のロボットへの会話データをクラウドに送り、生成AIが返答をロボットに返し、自然な会話を行うというものだ。蓄積された音声データは教師データとして申し分ない。
ZETAアライアンス 理事の朱強氏は、「従来は人間がデータを見て、どう判断するかが重要だったが、今後その判断を生成AIで自動化できる」と言う。ZETAの用途の1つにビル管理があるが、多岐にわたるデータやアラートへの対応は、ケースを想定したプログラムの処理と最終的な人間の判断で行っている。この判断を生成AIに任せ、将来的にはビル管理を無人化できるとみる。
ZETAアライアンス 理事 朱強氏(テクサー 代表取締役)
AIという武器が、自営IoT無線の価値をより“プラチナ化”する。