NTTは2024年10月28日、サブテラヘルツ帯(300GHz帯)の半導体電子回路を用いた小型無線デバイスを開発し、300GHz帯では世界最高となる160Gbpsのデータ伝送に成功したと発表した。
2030年頃の実用化が見込まれているBeyond 5G/6G時代においては、24~90GHz帯のミリ波に加え、100~300GHz帯のサブテラヘルツ帯などの高周波数帯の利用が期待されている。
サブテラヘルツ帯は空気による減衰が大きく、屋外や長距離通信には適さないが、その分超高速・大容量通信を実現できる。キオスク端末にスマートフォンをかざし、大容量の動画データ等をダウンロードするといった近距離通信などが現時点での有望なユースケースだ。
これまでサブテラヘルツ帯に関する様々な研究開発・実証が行われてきたが、「モジュールなどの様々な要素部品を組み合わせた『バラック形態』のフロントエンド(FE:アンテナとベースバンド部の間に位置するアナログ回路群)による120Gbpsのデータ伝送が限界だった」とNTT先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部 主任研究員の濱田裕史氏は説明した。
NTT先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部 主任研究員 濱田裕史氏
また、複数のモジュールを組み合わせるバラック形態ではFEが大型化するうえ、帯域減少等の原因となるモジュール間の接続部が存在することで、FEの動作帯域が制限されてデータレートの向上が難しくなるという問題があったという。
これらを解決するためには、「集積化」を行って1つのモジュールで動作させるという解決策があるが、この場合にはFE内部で発生するLOリークと呼ばれる不要波への対策が必要となる。周波数混合器(ミキサ)は、局部発振(LO:Local Oscillator)信号を用いることで、低周波信号を高周波信号に周波数変換するが、このLO信号の一部がミキサから漏洩してしまうのである。
LOリークが増幅器に入力されると、増幅器の利得が低下する等、他の回路動作に悪影響を及ぼすおそれがある。「バラック形態であれば、フィルターを準備することでLOリークを除去できるが、集積化を行う場合にはフィルターの実現が困難になる」と濱田氏は語った。